大阪府岸和田市の公共工事をめぐる汚職事件。前市長の永野耕平容疑者が、2つの公共工事をめぐり、業者から賄賂として現金計1900万円を受け取った疑いで、大阪地検特捜部に再逮捕されました。
2つの公共工事の入札は、いずれも最低制限価格と同額で落札されていました。取材を進めると、地元の建設業者などの間では、永野容疑者と建設業者の“癒着”を疑う声もあがっていました。 (MBS大阪司法担当 柳瀬良太)
■業者から1900万円の賄賂を受け取ったか
9月24日に収賄などの疑いで再逮捕された岸和田市の前市長・永野耕平容疑者(47)。大阪地検特捜部によると、再逮捕の容疑は次の通りです。

永野容疑者は、公共工事をめぐり市が2021年8月と2024年5月に実施した入札に先立ち、建設会社の代表取締役を務め、かつ、もう1社の実質的経営者でもある男性に対し、非公表のはずの最低制限価格を漏えい。
▽男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)と、▽実質的経営者の立場にある建設会社に、それぞれ落札させました。
そして便宜を図った見返りなどとして、永野容疑者はその男性から、▽2023年5月に500万円 ▽同年7月に400万円 ▽2024年11月に1000万円と、3回にわたって計1900万円を賄賂として借り受けるなどした疑いです。
地検特捜部は、永野容疑者の認否や動機、借り受けたお金の使途や、返済したか否かなどについて明らかにしていません。また、建設会社の男性(今年7月に代表取締役を辞任)は、MBSの取材に応じていません。
■2つの入札で「最低制限価格と同額」で落札

岸和田市の入札記録によると、2つの公共工事は水道管の取り換え工事で、▽男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)と、▽実質的経営者の立場にある建設会社が、いずれも最低制限価格と同額で落札していました。
・2021年8月の入札 流木低区配水本管布設替工事
男性が代表取締役を務めていた建設会社を含む共同企業体(JV)が、最低制限価格と同額の9億6603万4000円で落札
(入札には5つの共同企業体(JV)が参加 2つのJVは最低制限価格を下回り失格)
・2024年5月の入札 土生町配水本管布設替工事
男性が実質的経営者の立場にある建設会社が、最低制限価格と同額の1億3425万8000円で落札
(建設会社14社が参加 4社が最低制限価格を下回り失格 辞退が2社)
■永野容疑者と業者の”癒着”を疑う声

地元の建設業界関係者らを取材すると、永野容疑者とこの男性の建設会社を巡っては、“癒着”を疑う声も上がっていました。
建設会社の関係者
「永野前市長とその建設会社は、昔から昵懇の仲。仲が良いのはよく聞いた。永野前市長時代は市の発注工事をよく落としていた印象がある」
別の建設会社の関係者
「ある入札の際に、分厚い資料を用意した業者が、薄い資料だったその建設会社に負け、おかしいなと言われていた。毎年のように、その建設会社が落札していて、不自然だと言われていた」
岸和田市は、公共工事の入札に参加する際に、建設業者を格付けしていて、請け負える工事金額の目安も設定しています。
渦中の男性が代表取締役を務めていた建設会社の格付けは、合計でわずか10社しかランクインしていない、最上位の格付けとなっていました。
■入札競争激しく最低制限価格と同額で落札のケース増 正確な価格予測が必要な現状

最低制限価格は、公共工事などの入札において、不当に安い価格で入札されることを防ぎ、工事や業務の品質を確保するために設定されるもので、最も近い価格を提示した業者が落札することになりますが、下回れば失格となり落札できません。
関係者らを取材すると、最近は最低制限価格を計算するソフトウェアの精度も上がり、最低制限価格と同額を提示できるケースも多く、落札して受注を獲得するためには、より正確な価格予測が必要になっていたということです。