急成長の裏に潜むポップマートの課題
輝かしい成功を収める一方で、ポップマートはいくつかの課題も抱えています。
一つは、転売ビジネスの活況化です。組織的な転売ヤーによる買い占めが横行し、オンラインストアでも実店舗でも常に品切れ状態が続くという状況に、運営側も頭を悩ませています。購入点数の制限や身分証明書の提示といった対策を講じていますが、いたちごっこの状態が続いています。
また、ブラインドボックスという販売方法は、射幸心を煽る側面が指摘されています。「次こそは欲しいものが出るはず」と、予算以上の金額を費やしてしまう消費者が続出し、中国国内で社会問題化。8歳未満の購入を禁止する提案がなされるなど、規制の動きも出てきています。
さらに本質的な課題として、IPビジネスの宿命である「飽きられる」リスクがあります。かつて業績を牽引したモリーも2022年に人気がピークアウトし、その後にラブブが登場したことで業績が再浮上した経緯があります。ラブブもいつか飽きられる可能性を考えると、次のヒットキャラクターをいかに生み出し続けるかが、企業の成長の鍵を握っています。
ブームで終わらせないために 創業者が語る未来
一方で、創業者ワン氏は楽観的で、インタビューでは「私たちは慌てません。大切なのは芸術性の高さであり、早急な利益は追わない。ゆっくりとやればいいのです」と強調しています。急成長している企業ではあるものの、その急成長を目的化しないというスタンスを現時点では明言しています。そのため、そうしたスタンスを守りながら、一過性のブームで終わらせず、いかにして飽きられないようにするかという点が、今ポップマートに問われていることなのでしょう。
<野村高文>
音声プロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。