なぜ人々は熱狂するのか?ポップマートの巧みな4つの戦略
ラブブ人気の背景には、運営企業であるポップマートの巧みな戦略があります。
一つ目の戦略は、「ブラインドボックス」形式という売り方の巧みさです。これは、中身が見えない箱にキャラクターをランダムに封入し、開封するまで何が入っているか分からない販売方法です。トレーディングカードのように、何が出るか分からないワクワク感が若者の心を掴みました。
二つ目は、ビジネスモデルの転換です。ポップマートはかつて、様々なキャラクターを高額なコレクター商品として販売していましたが、ある時点から事業をブラインドボックス形式に特化。単価を1500円程度に設定したことで、購入者層が一気に若返りました。
三つ目は、自社IP(知的財産)開発へのシフトです。創業当初はサンリオのハローキティやディズニーといった有名IPのライセンス商品を扱っていましたが、2016年頃から自社開発の方針へ転換。現在では、売上の9割以上を自社開発IPや専属契約アーティストのキャラクターが占めています。これにより、ライセンス料に依存しない高い利益率を確保できるビジネスモデルを築き上げました。
そして四つ目が、出店戦略と店舗のメディア化です。キャラクタービジネスでは代理店経由の販売が一般的ですが、ポップマートは直営店の展開にこだわりました。中国全土に400店以上、海外にも120店以上を展開し、その内装をSNS映えするように作り込むことで、店舗そのものをメディアとして機能させたのです。通常、メーカーと小売業はビジネスモデルが異なるため両立は困難ですが、同社は強い意志を持って両方に投資し、成功へと繋げました。
創業者は22歳で創業 雑貨店から始まったポップマートの軌跡
このポップマートを率いるのは、1987年生まれの創業者ワン・ニン氏です。彼が22歳だった2010年に創業しました。商売人の家系に生まれ、幼い頃からビジネスに興味があったワン氏。大学時代に、香港で見た「格子街」というビジネスモデルを知りました。これは、一つの店舗を格子状に区切り、小さなスペースを貸し出して商品を販売する仕組みで、ポップアップストアに近い形態です。
この着想を得て、大学卒業後に北京のスタートアップの聖地・中関村地区でキャラクターグッズなどを扱う雑貨店をオープン。個人のアーティストの作品を集めて販売すれば、芸術家のためにもなり、面白い商売になると考えたのが始まりでした。
しかし、当初はビジネスがなかなか軌道に乗らず、売上が伸び悩む時期が続きました。
飛躍のきっかけは、創業から5年後の2015年でした。日本のIPである「ソニーエンジェル」の中国における代理店販売契約を結び、のちに主力となるブラインドボックス形式で販売したところ、これが大ヒット。会社の累積損失を解消することに成功します。
この成功体験を通して、ワン氏はアート作品やキャラクターに対する人々の強い愛着を再認識し、「自社でもそういったキャラクターを作りたい」という思いを強くします。これが、自社IP開発へと舵を切る大きなきっかけとなりました。
そして翌2016年、香港のデザイナーに依頼して生み出したキャラクター「モリー」が大ヒット。売上高は3年で8倍に急拡大し、ポップマートの名を世に知らしめました。現在のラブブの成功は、このモリーのヒットがあったからこそなのです。