マグロの「鉄火巻き」とは異なり、新鮮なヒラマサのコリコリとした食感が特徴の「白鉄火」をはじめとした長崎市の“魚グルメ”。魚市場の近さをいかした新鮮さと水揚げされる魚種の豊富さもあり、長崎市民の誰もがその美味しさは認めるところです。

しかし、長崎グルメの代表格「ちゃんぽん」「皿うどん」「トルコライス」と比べると、観光客に対する知名度はいまひとつ。どうすれば長崎の魚の美味しさや魅力を広く伝えることができるのか?

住吉光アナウンサー(以下:【住】)長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。平家達史NBC論説委員とお伝えします。

平家達史NBC論説委員(以下:【平】)今回のテーマは「長崎の食を磨く!観光コンテンツとしての『すし』」についてです。

【住】もうすぐ食欲の秋ですし、観光客にとって「食」というのは旅行先を決める上でも大事なコンテンツですよね。

【平】その通りです。特に日本を訪れる外国人観光客にとって「日本食を食べること」が旅の目的のトップなんです。近年は「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしていますが、その中でも「食」は非常に重要な役割を果たしています。

ただ、残念ながら「食材の宝庫」と言われる長崎は、その豊かな食のイメージがまだ薄いのが現状です。

「食の宝庫」長崎の魚は美味で魚種も豊富 でも知名度は…

【住】ちゃんぽんや皿うどんなどのイメージはありますが、私は長崎に引っ越してきて魚のおいしさに驚きました。

【平】実は、長崎県は海面漁業・養殖業の生産量が全国で2位、水揚げされる魚の種類は300種以上で全国1位と言われているんです。年間を通して旬の魚を楽しむことができる、まさに「魚」が大切な観光コンテンツと言えます。

【住】データでもしっかりポテンシャルが示されている。なのになぜ魚のイメージが薄いのでしょうか。

【平】地元には「長崎には観光の目玉になる魚がない」という意見もあるようです。しかし日本中で親しまれている魚だからこそ、その美味しさの違いが明確にわかるのが長崎ならではの強みだと思います。特にコリコリとした食感は長崎ならではの魅力で、「白鉄火」はその代表例ですね。

【住】課題はこの魚のおいしさをどうやって観光客にアピールしていくかですよね。

魚の人気の食べ方はダントツで「すし」 地域ブランド化の先行事例も

【平】外国人観光客に最も人気のある魚の食べ方は「すし」なんです。訪日外国人が日本滞在中に食べたい料理のトップは、ダントツで「すし」で、日本人でも男性はもちろん、特に女性や子どもにも人気が高いです。

【住】観光客が食べたいものと、長崎が誇る食材の魅力が「すし」という形で一致するわけですね。

【平】その通りです。他の地域でも、その強みを活かした取り組みが進んでいます。例えば富山県は「すしと言えば、富山」を合言葉に、世界へ魅力を発信するプロジェクトを2023年度から始めています。富山湾を「天然の生け簀」と見立てた「富山湾鮨」という独自のブランドをつくり街全体で育てています。

【住】「富山湾鮨」ほかのすしと何が違うんでしょうか。

【平】富山湾鮨とは「富山湾で獲れた旬の地魚」と「富山県産米」を使った握り寿司10貫と、富山らしい汁物が付いたメニューです。

これらの条件は富山湾鮨を提供する店では全店共通となっていて、今は40を超える店舗が提供しています。店ではネタの名前を一貫ずつ説明することになっていて、品質管理だけでなく、おもてなしの心も兼ね備えています。

【住】ブランド化することによる変化は何かあったのでしょうか。

【平】これによって、元々1,000円台だった握りずしのランチの単価が、2,700円~5,500円にまで上がっているんです。

また北九州市も「すしの都」を目指し、行政と民間が連携した協議会を設立しました。市役所には「すしの都課」を新設し観光客を増やそうと動いていて、富山県智寿司を通して連携を深めています。

その一環で、今年6月に開かれたのが、寿司を街おこしにつなげようとしている北九州市の武内市長と富山県の新田知事行った「すし会談」です。

北九州市は今年4月に「すしの都課」を立ち上げていて、一方の富山県も「寿司といえば、富山」をキャッチフレーズに一足早くブランディングに取り組んでいます。

会談で富山県知事と北九州市長は、それぞれの地元で取れた寿司ネタを食べ比べ。

その後、両者とJR西日本と連携して、寿司をテーマにした観光ルートを作ることで一致しました。

北九州市・武内和久市長「寿司のゴールデンルートをつくって、そこに多くの他の地域も巻き込んで、あるいは民間企業も巻き込んで大きな流れを作っていきたい」

8月には実際に富山県と北九州市、JR西日本の三者でイベントも開催していて、寿司を通した連携が進んでいます。