実業団チーム入りを決意した理由は“心残り”
Q.実業団入りを決意した経緯は?
小林:陸上に心残りがあったので、3年の夏くらいからうっすらと実業団入りの道も考え始めました。いくつかの実業団チームにアプローチしましたが、トラックのタイムが遅いことと陸上部に入っていないことで、なかなか難しい現実も見えてきて、公務員になるための勉強もしていました。しかし大阪国際女子マラソン(23年1月)に出場して、ハーフまで第2集団で走ることができたことが楽しくて、マラソンを本気で突き詰めたくなって、実業団入り1本に切り換えました。

Q.心残りとは
小林:中学の成績で見切りを付けちゃったんですが、中学の時一緒に走っていた選手がインターハイや高校駅伝で活躍している姿を見て、自分もやればよかったな、と思ったりしていました。早大入学時も一度は体育会の競走部に入ることを考えたのですが、早大の競走部は厳しいイメージがあって、自分にはできないと諦めてしまいました。そういうところの心残りです。
Q.大学4年時には大塚製薬への入部が決まっていました。
小林:10月のMGCは東京に住んでいたこともあって、サークルの友だちと一緒に沿道から応援しました。私からすれば出ている皆さん強い選手ばかりなのに、その中で2人しか代表の座を取れない。本当に厳しい世界だという思いを持ちましたし、4年後、この舞台を自分も走れるのかな、と考えながら応援していました。
Q.大学4年時のホノルルマラソンはサークルの最終目標なのに、1カ月後の大阪国際女子マラソン(2時間29分44秒の学生歴代3位相当で12位)を優先して出場しませんでした。
小林:走りたかったですね。ホノルルはエントリーフィーも払っていて、学生にとっては結構痛かったです(笑)。大阪国際女子マラソンのネクストヒロイン枠に選んでいただいていたので、ホノルルを走って大阪が全然走れなかったら恥ずかしいですし、申し訳ないと思って。
長時間のトレーニングを行う理由
Q.入社後、故障がほとんどない、ということも聞いています。
小林:ちょっとした痛みは出ますが、すぐにケアをしてもらえますし、治療してもらえる環境があります。あとは食事だと思います。栄養バランスをしっかり考えてくれている食事を、毎日食べられます。
Q.フォームも変わりましたか?
小林:自分の意識で変えている部分はありませんが、動画を見たりすると、股関節が回るようになってきたのかな、と感じる時はあります。股関節が骨盤から動くようなイメージです。大塚製薬は全員、初動負荷トレーニングⓇを行っていますが、私も股関節や肩周りの可動域が少しは広がるようになってきたかな、と思いつつも、もう少し長くやらないと大きな違いにはならないんだろうな、と思っています。
Q.走り以外のトレーニングも、かなり長時間行うと聞いていますが
小林:会社の中にジムがあって、一度寮に帰ってもやることがないので、お昼ご飯を社食で食べたらそのままジムに行ったりするからかもしれません。あとは、自分はやると決めたらやらないと気が済まない性格なんです。ジムでやる初動負荷トレーニングⓇもそうですし、寮でハードルドリルもよくやります。チームでやることもありますが、大半は自分でこれだけやる、と決めて取り組んでいます。
Q.大阪国際女子マラソン前の練習で、30kmの変化走を苦しんだメニュー、頑張ったメニューとして挙げていました。東京世界陸上に向けても行いますか
小林:東御と横手山(ともに高地トレーニング場所)で2回か3回、あるいは4回やると思いますが、大阪の前とは場所も違いますし、夏なのでタイムは落ちると思います。世界大会を走られた先輩方からも、夏のマラソン練習は、冬と同じものを目指してはいけないと聞いています。
Q.世界陸上の目標は
小林:8位に入れたら(ロサンゼルス五輪選考会の)27年MGC出場権も取れるので、とっても嬉しいと思うのですが、絶対に8位に入るぞ、とは考えられません。代表になっただけで、自分の中ではとんでもないことなので、無事に走れればいいなと。選んでいただいて弱気なことは言ったらいけないのかもしれませんが、自分らしく走れたらそれでいいのかなと思っています。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)