先頭集団で冷静な歩きをして集中力を高める

Q.世界記録のときは従来の薄底シューズではなく、中厚底といえるシューズでした。ラコルーニャもそのシューズでしたか
川野選手:

厚さとしては、中厚底のシューズをラコルーニャでも履きました。高畠では従来の薄底のシューズに厚みを少し足したものを着用していましたが、ラコルーニャはカーボンが入っていて反発性を感じやすいシューズです。理由としては、東京世界陸上に向けてカーボンを試したかったことが大きいですね。歩型の判定や、レース運びにどう影響するかを確認したかったんです。厚底シューズは踵が接地した時に安定感がなく、膝が曲がりやすくブレにつながります。踵の接地感がある今回のシューズを試してみました。ラコルーニャでもスピードの変化に対応できて、苦しいところも乗りきることができましたね。

Q.4月から新しく取り組んでいる動きやトレーニングも、そのシューズを履きこなすことに役立っていましたか
川野選手:

そうです。インナーマッスルで背骨をしっかりしならせて歩きます。背中から殿部、大腿裏にかけての後ろ側の筋肉をしっかり使って、地面を押す動きが重要で、トレーニングもシューズに合わせて行ってきました。ただ、今後の練習次第では、少し違ったシューズに変える可能性はあります。

Q.スタノ選手、ダンフィー選手とも手合わせをしたわけですが、東京世界陸上ではどんなレース展開をイメージしていますか
川野選手:

この地点で、このペースで、という部分はレース戦略に関わりますし、自分のコンディションとも関わってくるので、明言するのは難しいですね。今の段階で言えることは、集団の中であまり動かずに、他の選手の様子もうかがいながら、しっかりと先頭集団の中の歩きを維持し続けることです。それが120%の力を出す集中力につながります。レース中盤では誰が抜け出しても反応できるように、他の選手の動きもよく見ながらレースを進めます。自分が勝負を仕掛けるのは、おそらく終盤になると思います。勝負どころを見極めて、スパートすることが必要になります。

Q.35km競歩は大会初日の8時スタート。大会最初の種目で川野選手たちが、日本選手団のトップバッターになります
川野選手:

オレゴンとブダペストの35km競歩も、東京五輪の50km競歩も大会期間の後半に行われてきました。競歩種目としても20km競歩が先に行われるのが普通です。20km競歩の山西さんや池田のメダル、他種目の選手たちの活躍を見て、自分も頑張ろうと刺激を受けていました。先輩方の背中を追っていくマインドでレースに臨んでいましたが、今回は自分が初日の本当に一発目です。これまでの引っ張っていただいた分を、今回は自分が最初に結果を出すことで20km競歩や、日本チーム全体に良い流れを作りたいと思っています。陸上界を引っ張ってやるんだ、というくらいの気持ちでメダルを、さらには今まで取ったことのない色のメダルを目指して頑張っていきたいと思います。

■写真は今年6月7日にスペイン・ラコルーニャで行われた世界陸連グランプリ競歩(20km競歩)で、一堂に会した35km競歩の新旧世界記録保持者3人。左から川野、スタノ、ダンフィー<写真提供:川野将虎>

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)