〝厄介者〟の雪を有効活用する
南魚沼市では、冬の間に積もった大量の雪の活用について、民間企業や大学関係者と「雪の勉強会」を2021年に立ち上げて、雪資源の活用を中心とした再生可能エネルギーの導入について研究を進めている。
冷房への活用は、新型コロナウイルスワクチンの接種会場などでも試験的に行ってきた。今後は市の健診施設や給食センターなどの一部に雪を使った冷房の導入を進めている。市をあげて雪をエネルギー資源として活用するのは、「豪雪地の課題解決が目的」だと岩井課長は表現する。
「豪雪地の課題は雪です。冬の最中は本当に厄介者で、毎日除雪しなければなりません。この厄介者の雪をいかに夏の間まで残しておいて、有効活用できるかを研究しています。その中でも最も大きな目的は、災害などによって電源を喪失した際に、貯めておいた雪を活用することです。雪を活用できれば、電源がなくても稼働する冷蔵庫を有していることになります。それを少しでも簡易で安価な方法で実現しようとしているのが、今回開発したシートです」
「雪室」で日本酒を貯蔵する
南魚沼市内では、民間企業も雪のエネルギ−を活用している。その一つが日本酒の「八海山」を生産している八海醸造。敷地の入口にある大きな蔵で「八海山」の9割を製造している。また、周辺にはビールの醸造所や観光客も利用できる社員食堂のほか、飲食店、売店、雑貨店なども揃えた「魚沼の里」を展開している。


「魚沼の里」の木々に囲まれた一角に、事前の申込みによって見学できる施設「八海山雪室」がある。


雪室は、わかりやすく言えば、雪を活用した天然の冷蔵庫だ。日本書紀にも雪室が使われていた記述がある。冷蔵庫が普及する以前は、雪室がこの地域の各家庭にあり、秋に取れた農作物を雪室で保存しながら食べていたという。こうした雪国の暮らしを説明する展示があり、展示スペースや通路もひんやりと冷たさを感じる。
通路の先に現れたのは、建物の一部に積み上げられた雪と、日本酒を貯蔵するタンク。温度計は6.3度を示している。


雪を入れるのは年に1回で、2月下旬頃に大量に積もった雪を屋根や壁いっぱいに入れていく。この雪室のように、1つの部屋に雪と貯蔵物を入れて冷やすタイプは、氷室型と呼ばれる。ほかに、直接雪をかけるかまくら型もある。この雪によって、年間の室温は4度前後、夏場に上がっても6度程度とほぼ一定に保たれている。