「『政経一体の国』に日本企業の声を伝える」 中国日本商会の役割とは
Q中国日本商会というのはどういう組織なんでしょうか?
本間会長
1981年に設立された中国で最も古い外国企業の商工会議所になります。また中国の法律で唯一認められた日本企業の商工会ということが非常に明確に位置づけられております。中国には結社や集会の自由がないので、こういうお墨付きっていうのは大変大事なんですね。会員は約520社です。
縁あって約2年前に会長に就任したんですけれども、当時はコロナを経て日本企業の事業環境も非常に難しい時期だったんですね。ですから「日本企業の声をひとつにして、中国政府なり日本政府に伝えることが大事なんじゃないか」と大使館幹部に話したところ、当時の垂秀夫中国大使から「じゃあ本間さんやってよ」とリクルートされちゃったんですけれども。皆さんの声を聞く「公聴活動」、それを整理して日中両国政府にお伝えする「渉外活動」、それらの活動を皆さんにまたお伝えする「広報活動」を3本柱にしております。

Q中国という難しい国ですから、まとまって交渉するのが大事なのでしょうか?
本間会長
中国が西側の国と決定的に違うのは「体制」なんですね。多くの日本人にはわかりにくいと思うんですが、中国は「政経一体の国」なんです。非常に細かいことまで政治が差配するのが中国の特徴です。
政治の人たちに私たちが困っていることや解決して欲しいことをタイミングよくポイントを絞って訴えかけていくというのが大変重要かなと思います。アメリカやヨーロッパの企業も同じように商工会を持っていますが規模には大きな差がありまして、アメリカもヨーロッパも数十名の専従職員がいてレポートや陳情するドキュメントを作るんですけれども中国日本商会は専従は2人しかいないんですね。あとはみんな会員の持ち寄り、ボランティアで運営してるんです。それでもこの2年間で私たちの知名度は欧米と劣らないところまで改善できたんじゃないかなと思っておりまして、会員の皆さんに本当に感謝しております。
Q先日もレアアースの輸出規制緩和を要望されていましたが、成果も得られているのでしょうか?
本間会長
そうですね。中国政府は少し皆さん意外に思われるかもしれないですけれども、外国企業をとても大事にしているんですね。理由は法人の数では中国全体の0.8%しかない外国企業が就業者数で8%、税収で18%、輸出で30%を支えているというのを中国政府の幹部があるところで発言していて、それは多分オフィシャルな数字だと思うんですね。税収の18%を外国人が支えているってなかなか日本の皆さんに理解しにくい状況だと思うんですけども、中国政府は私たち外国企業の動向をある意味とても気にしています。
従って日本企業の意見は中国日本商会に聞けば出てくるという存在になれば結構重宝して頂けるんですね。レアアースについても日本企業の要望は丁寧に聞き取っていただきましたし、最終的に大阪万博の中国ナショナルデーの少し前に大量の許可が交付されて非常に多くの日本企業が難しい時期を脱することができたんじゃないかなと思います。
Q去年11月にはビザなし渡航も再開されました。こちらも商会で重ねて要望されていましたよね?
本間会長
本当に大きな成果であり、私達も誇っているんですけどもこのビザなし渡航は年末までの暫定措置なんですね。これを延長して恒久的な措置にして頂きたいというお願いも既に始めています。
ただし日本から中国への渡航者数は残念ながら今年に入ってあまり伸びていないんですね。逆に中国から日本に行く旅客は30%、40%という成長になっておりまして、この交流のギャップというのは我々も本当に気にしております。今日の中国の発展ぶりはやっぱり来て見て感じないとわからないですよと。ぜひ百聞は一見に如かず。来てくださいというのを会う人会う人に申し上げているという感じですね。
Qどうして皆さん中国に来てくれないのでしょうかね?
本間会長
恐れを抱かせるような報道も少しあると思うし、反スパイ法に関して明瞭な説明がないことも私は日本企業幹部の行動に影響を与えていると思うんですけれども、その辺ももっと踏み込んだクリアな説明をして頂いてぜひ皆さんが安心して来ていただける環境を整備して頂きたいと思いますね。
(後半に続く。音声配信でお聞きになりたい方はポッドキャスト「北京発!中国取材の現場から」で)
聞き手 JNN北京支局長 立山芽以子
JNN北京支局カメラマン 中野陽