■「自民党は“地方分権”だから」身内の反発

「公明党も、なにもそこまで言わなくてもなぁ…」。ある自民党幹部はぼやきながら首をかしげた。この幹部は、公明党と自民党は組織の体質が違うのだと強調する。「うちは“地方分権”型、ボトムアップの組織。トップダウンで物事が決まる公明党と違って、地方組織に対して、上からやれと命令できない」。公明党との選挙協力を進める自民党本部に対し、“身内”である地方組織から反発が出ていたのだ。

特に強い抵抗を示したのが、自民党・兵庫県連だ。参議院の兵庫選挙区は改選数が3議席。前回2019年の参院選では、1位の日本維新の会、2位の公明党に続き、自民党の候補者は3位とギリギリで当選圏内に滑り込んだのだった。

<2019年 参院選兵庫選挙区の結果>
1位 維新 清水貴之氏 57万3427票(当選)
2位 公明 高橋光男氏 50万3790票(当選)
3位 自民 加田裕之氏 46万6161票(当選)
4位 立憲 安田真理氏 43万4846票
5位 共産 金田峰生氏 16万6183票
6位 N国 原博義氏   5万4152票

無論、2022年7月の参院選は別の候補者なので単純な比較はできないが、自民党・兵庫県連は、「公明党に推薦を出して、自分たちの候補が落ちたらどうするのか」と危機感を強めていた。兵庫県連が態度を硬化させた背景には、もう一つの要素がある。それは、2019年の参院選で、安倍晋三総裁(当時)はじめ大物がたびたび兵庫入りしたが、公明党候補の方の応援演説に力点を置いたことだった。当時、自民党候補の優勢が伝えられるなか、連立を組む公明党に配慮してのことだった。しかし、ふたを開けてみれば自民の候補は“3着”。県連内で「それはないだろう」と怒りの声が上がったという。自民党側には簡単には相互推薦を決められない事情があるのだ。

■公明党が選挙協力を急ぐワケ

一方の公明党の側は、なぜ、相互推薦についての合意を急ぐのか。公明党の関係者は、それは複合的な理由が重なったためだと説明する。

「最近、目標の票数に届いてないし、コロナの影響で会合もできない。早め早めから準備をしたいのでは」(公明党関係者)

2021年の衆院選、公明党は比例代表で800万票を獲得することを目標としたが、結果700万票台と目標には届かなかった。また、支持母体である創価学会の組織力を生かした選挙戦を強味とする公明党にとって、コロナ禍で選挙に向けた会合や集会の開催が難しいことも痛手となっている。公明党としては選挙戦の準備を早く進めたい理由がいくつもあるのだという。1月19日、公明党の幹部は、取材にこう明らかにした。

「自民党の推薦を待たずに、もううちは選挙協力なしということで走り出してる」(公明党幹部)

自民党との選挙協力抜きの選挙戦を戦うべく全国の組織がすでに動き始めているというのだ。