■「厳しく抗議しろ」総理の怒り
新型コロナのクラスターが発生したアメリカ軍の部隊が、日本へ向かう前にPCRなどの検査を実施していなかった・・・そう報告された岸田総理は「厳しく抗議しろ」と珍しく怒りを露わにした。先手を打って、水際措置を強化し、オミクロン株対策で一定の評価を得ていた岸田政権にとって、水際措置の網を掛けられない、アメリカ軍がコロナ対策の不安定要因であることが突きつけられた瞬間だった。日米同盟の現場で、今、何が起きているのか。コロナを巡る動きを追った。
2021年12月、沖縄のアメリカ軍キャンプ・ハンセンで新型コロナのクラスターが発生し、12月24日までに240人の陽性が確認された。さらに、日本人従業員から沖縄で初となるオミクロン株感染が確認され、日本人従業員と家族のオミクロン株感染者は12月24日時点で9人にまで拡大している。
このキャンプ・ハンセンではアメリカ出国時のPCR検査が9月3日以降、実施されておらず、待機期間中の基地内での行動制限も行われていなかったのだ。
■日本の水際措置が及ばない、アメリカ軍ならではの特殊事情
新型コロナの検疫を巡る、アメリカ軍のずさんな対応はキャンプ・ハンセンの事案の前にも頻発してきた経緯がある。2020年7月には、羽田空港に到着した岩国基地の関係者3人が空港でのPCR検査の結果を待たずに、民間機で基地に向けて移動し、陽性が確認された。同様のケースは横田基地や横須賀基地などでも起こっている。
こうした事案が起こる度に、基地を抱える地元からは感染拡大への不安の声と厳格な検疫を求める声が相次いできた。民間機で来日するケースでもこうした内規違反行為が繰り返される中、直接、軍の飛行機や船で到着する場合はまったく、日本の水際措置は及ばない。キャンプ・ハンセンでのクラスター発生には、日米地位協定に基づいて、日本の法令が適用されずに入国できるというアメリカ軍ならではの特殊事情が背景にあった。