広陵高校の出場辞退から見えるメディアが伝えない問題点

Q.広陵高校(広島)の部内の暴力行為による出場辞退についてはどうとらえましたか

スポーツジャーナリスト 小林信也さん
私は30年ほど前から高校野球の問題を指摘してきましたが、これまで中々取り上げられることはありませんでした。ここ最近は暑さの問題も本に書いたりしていますけれども、(注・「真夏の甲子園はいらない問題だらけの高校野球」岩波ブックレット/玉木正之・小林信也編)封印されるんですよね。なぜだと思いますか。主に夏の場合、朝日新聞が主催ですし、NHKが全国放送で全試合やってますから、彼らは報道で高校野球の悪い面はあまり俎上にあげないのです。

Q.具体的にどういうことが挙げられますか。

スポーツジャーナリスト 小林信也さん
例えば地方大会は20人で戦うのに、甲子園に行くと選手が15人になる。私はこの問題について随分指摘しましたが、変わりませんでした。地方で優勝してみんな喜んでいても、5人の選手と親は「自分たちは全国出場で削られる」と。そのことをほとんどのメディアが問題にしなかった。
暑さ対策もあって去年から20人はベンチに入れるようになりましたが、変更された途端にNHKも朝日新聞も「今度から20人入れるようになった」と朗報のように伝えました。それまでは全く問題にしなかったのに、です。今回のことで言えば、出場を途中辞退した広陵高校は部員が164人と報道されています。甲子園でベンチに入れるのは、そのうちの、ほんの20人です。

Q.教育の一環としては、10代の高校生にとって「厳しい不均衡」でしょうか

スポーツジャーナリスト 小林信也さん
もちろんそれを選んだのは選手たち本人だったとしても、何らかの解決策はないかと訴えています。例えばサッカーの場合だと、選手権は別にして地域のリーグ戦を作って4部、5部まで設け、とにかく全員が試合に出られるという体制があります。
野球は練習試合で、「Bクラス」「Cクラス」の試合といった事例もありますが、いわゆる「自校のユニフォームを着て試合に出る」というチャンスがないまま卒業する、という状態は放置されたままです。