世界では女性リーダーが珍しくなくなっていますが、日本では未だに女性の総理大臣は誕生していません。なぜなのでしょうか。

これまで何度も党の役職や大臣の座に就き、キャリアを積み重ねている自民党の野田聖子衆院議員は、長く総理大臣への意欲を公言していますが、実現には至っていません。日本で女性総理が誕生しない背景になにがあるのか?そもそも、女性の総理がなぜ必要だと感じているのか聞きました。

■総理大臣はどんな人がなれる?同期・安倍元総理との“異なる前提”


ーー野田さんはこれまでもたびたび、「日本初の女性総理」になるのでは?という声が聞かれていますが、なぜ実現できていないのでしょうか?

自分なりにもね、チャレンジしているんですけど一向にダメですね。私はたくさんの総理大臣を直接拝見してきましたけど、大統領と違って国民が直接選ばない人たちで、国会の中から選ばれるわけですし、かつ、やっぱりその時の与党の人から選ばれるっていうのが条件ですよね。

自民党は比較的与党でいる時期が長いんだけど、そこから総理大臣を選ぶための「総裁選挙」というのがあって、ここは結構なかなか私達にとってハードルが高く・・・。要はその自民党の中で、推薦人を20人集めなきゃいけないっていう、まずクリアしなきゃいけない条件があるんです。

そうすると、グループの大きいところだと、20人頭数を揃えやすいんだけど、私のように“インディペンデント”、1人で活動している人間からすると、推薦人集めが厳しいなということで、やっぱりどうしても女性が全体の1割にも満たない数なので、女性だけで整えるということも現実は難しい。そんな“女性ならではの困難”があって、まず初めの一歩で、環境が整わないっていうのが現状だと思います

ーー自民党総裁=総理大臣に選ばれた人を見ていて何か特徴があると思いますか?

多くの人たちが利益を分かち合える立場にいるかどうかっていう。例えば男性と女性で分けると、「やっぱり女性だと、僕たちの言うことを聞いてくれないのかな」っていうのがあるのかもしれない。

ーー1993年初当選の同期には安倍晋三元総理もいますが、比較してみてどのように「総理になる道筋」がずれてしまったのでしょうか?

1993年初当選同期の安倍晋三元総理と野田聖子氏

私と安倍さんの一番の違いはやっぱり「家柄」もそもそも違っていて、やっぱり名門ですよね。祖父は岸総理、父は安倍晋太郎外務大臣という名門中の名門で、最大派閥と言われるところの。議員1年生の時から、“王子様と庶民”みたいな感じ。それだけ多くの方たちが何代に渡るお付き合いの中で、安倍元総理をしっかり支えてきたっていうのは明らかだし、私の場合はまず、小さな派閥にいたけれども女性ということで、やりづらさを感じて1人になって、かつ、郵政民営化で造反して、自民党の王道を外れる行動をしたっていうことで、ある意味レッテルを貼られていて。

■海外の”女性リーダー誕生”のアプローチから見えてきたもの

ーー私たちが直接総理大臣を選べないという環境だと、「ジェンダー平等」がかなり進まないと女性総理誕生まではいかないのか、と感じます。

これから「どうしたら総理大臣が女性の中から選ばれるか?」と言うと、いくつかアプローチがあって、一つはやっぱり過去の世界の歴史を見ると、女性のリーダー、例えばイギリスのサッチャー元首相の場合は、その前の政権がズタズタになっちゃって、もう男の人では手に負えないっていう状況になったので、起死回生ということで、彼女が出現したりする。

もう一つは、デンマークなど政治の中の女性の数が半分ぐらいいれば、もう「男女」という垣根がなくなる。極端だけど、諸外国ではそういうアプローチがあってリーダーが選ばれてきているような気がします。

ーー「女性だから与えらえなかった機会」だとか「やりにくさ」というのはどういうところでしょうか?

総裁選に出馬するための推薦人を集める時に、「野田さんの推薦人になってよ」って言うと、必ず断られる言い訳の一つとして、「野田さんは女性政策しかやらないからいやだ」っていう人が多い。つまり自分たちにメリットがないってことなのかな。ただ、私は女性だけど別に女性政策をやっているつもりはなくて、国民の政策やってるつもりなんだけど、例えばジェンダーのことをやろうとすると、男性からすると、「女性のための政策で自分には損になる政策」って勘違いをしてる人が多いのかもしれません。

だからと言って当選すぐの女性議員を大臣にするっていうのは、国民に対して説明責任を果たす時に「数が必要だから、当選早々のこの女性にしました」っていうのも、私は良いことではないと思います。

アメリカなんかの閣僚を見てみると、別に国会議員にこだわってないんですよね。様々な組織、民間団体、民間企業から来るっていう、寛容なところがあるけど、日本の場合はここのところ、ずっと日本の女性大臣は国会議員から選ばなきゃいけないっていう不必要な縛りがあって、どうしても対象者が少ないっていうことが、数が増やせない原因になっているような気がします。