戦意を高揚させていくため…治安維持法は「法の暴力・暴走」

山形県米沢市にある小さな戦争資料館に、特高警察の心得がわかる貴重な資料が残されている。

「特高警察講義要綱」。1941年に山形県警の特高課が講義用に作成したとみられる。冒頭でいきなり、こんな一文が。

「帰一し、奉るとは、全身全霊を陛下に捧ぐること」

「帰一」とは一つにまとまること。特高警察は「天皇陛下のために一丸となって、職務を遂行する」という意味だ。

資料には左翼の共産主義運動や外国のスパイ活動、さらに宗教や右翼の国家主義運動に至るまで、取り締まりの対象が多岐にわたり記されている。

山形大学 阿部宇洋 講師
「特高の資料は戦後、焼却処分の命を受ける。しっかりと特高の仕事を果たすべしということが書かれていて、それが天皇に向かってあるということが書かれているというのが、非常に珍しい資料という評価を得ました」

治安維持法は、戦時体制が進むにつれ、対象が際限なく広がった。

小樽商科大学 荻野富士夫 名誉教授
「最初は拡張解釈もしない、慎重に扱う。健全な社会運動については関係ない。適用対象にならないという説明をして」

ところが…

小樽商科大学 荻野富士夫 名誉教授
「多くの人たちを戦争に主体的に、戦意を高揚させていくためには、逸脱している部分は全部摘み取っていく。治安維持法は法の暴力である。法の暴走であると考えます」