若い世代へ「今を大事にしないと未来はない」

若い人になんぼ言うたってダメ、僕は大学の教授もやったけどダメ。世界中情けない、自由奔放これだけがいいとか、そうじゃないよ、もっと大事なことを考えて、人生の価値観というものを知ってくれなきゃだめだ。
今の連中は「どうでもいい、未来、未来へ」と言いますが、未来なんかありませんよ。今を大事にしないと。ナウ=今があってこそ未来がある。未来なんか誰にも分からない、未来なんてどこにあるんです。その前に今生きているということの価値観を大切に思うことが大事。それをみんな忘れている。わたしは若い連中にそれいいたいね。一言だけ。
日本は80年前のことなんて誰一人忘れていますよ。もうねえ、情けない日本にならないでください。残された広島や長崎の無残な原爆のあとをみてぼけーっと見るんじゃなくて、いかに馬鹿なことをしたなあと。戦争という愚かなことを、と言うて、まだやっているやん世界中で戦争を。終わりませんよ。
トルストイの「戦争と平和」の中でいいましたよ。人間の愚鈍な価値観、それは自分の権力を示そうとするだけやと。みなそれや、そんな価値てあらへん。だからみんなが平等、みんな区別されちゃいけない。ノーディスクリミネーション、そしてジアザーピープルのために手を貸してあげる。どんなことにも、苦しむ家族、飢えに苦しんでいる人たちのために。
テレビを見ても美味しい食べ物ばっかり、冗談じゃない。昔は梅干しと握り飯で生きていたんや。私たちはよくあんな乏しい食糧で戦ってきたよ。前線だけでなく、背後にいる民衆の人たちはどれだけ苦しい目にあったか、お米一つ、今大変やといっているけど、ほんとうに大変やったんよ。本当にたいへんやったんよ、考えられないほど。今の日本人にはもっと自制心を持ってほしい。以上、ありがとう。
【千玄室さん】大正12年生まれ。茶道・裏千家の15代家元を継承し、1997年には文化勲章を受章、茶道の普及に貢献。2002年、家元を長男に譲る。太平洋戦争中は海軍の元特攻隊員で戦後は、茶道を通して平和を訴える活動を続ける。今年5月に転倒して京都市内の病院に入院、8月14日未明に102歳で死去。