「千利休は切腹 また腹を召さなあかんか」

何とも言えないねえ、あのときは、どうせ死ににきたんだからじたばたしてもしょうがないやないかとみんなそうですよ、でも中には、言うて悪いけど、「わしら何のために死ぬんやろなあ」とつぶやくように、つぶやくようにそういうのが耳に入る。

すると「しっ、しっ」誰かが、そんなこと言ったら…と、当時は一切口に出せない、泣き言も言えない、その苦しさは、大学で講義とかするけど今の連中にはわからないわ。若い連中はそんなことを言っても、ぼけーっとしている。

利休が朝鮮征伐を諌言(かんげん)して切腹を命じられた、はあー、と、その時思ったことはそれだけですよ。利休は腹を召された、私は15代目でまた腹を召さなあかんかなと、それだけです。それ以上何にも、考えんほうがいい。ただ、さみしそうなおふくろの顔が出てきてね。それだけやった。