年間支出30万円負担増の可能性も 我々ができる防衛策は?
高柳キャスター:
3つのシナリオが発表された7月から1か月半が経ち、現在の試算はどのようになっているのでしょうか。

髙見記者:
柏村首席研究員によりますと、「前例のない猛暑の状態なので、ほぼ『価格高騰シナリオ』が濃厚」ということです。新潟での干ばつや、九州の豪雨というのも記憶に新しく、価格高騰のシナリオに近づきつつあるのではないかということです。
高柳キャスター:
では猛暑による負担増で、この先どのように変わっていくのでしょうか。

まずは先ほどの「標準シナリオ」では、食費が最大で5000円、電気・ガス代は最大で4000円上がるという試算が出ています。
さらに5月頃からエアコンを使ったり、暑くなってくるとやはり冷たい飲み物やアイスなどが非常に欲しくなる。こういったところにも影響が出ますね。
髙見記者:
さらなる食品の値上げに加えて、夏は暑さから増える支出もあります。これだけ暑さが続くと、悲観的なシナリオ(価格高騰シナリオ)の方に行ってしまいそうな状況です。

「価格高騰シナリオ」では、例えば野菜がかなり採れなくなって供給量が落ちてしまう。コメの価格が大きく跳ね上がる。電気代も大幅に上がる。そういう状況を踏まえると、最悪の場合、4人家族の年間支出が、最大30万円ほど増えるのではないか、という試算も出ています。
出水麻衣キャスター:
では賃金が年間30万円上がるかというと、そうもいかないですよね。私達が取りうる防衛策は何かあるのでしょうか。

中室牧子さん:
すごく難しいですね。今ここでは暑さが家計に与える影響だけが出ていますが、最近の経済学の研究では、気温上昇の社会的な影響や、人々の行動に与える影響もいろいろ研究されています。例えば学力が下がる、紛争が起きやすくなる、自殺が生じやすくなるなどです。
暑さは認知能力に影響を与えるため、判断力を鈍らせるのではないか、と言われています。そのため、確かに家計への影響は心配ですが、エアコンをつけないでいると、(暑さが)私達の認知的な能力に影響を与えて、ますます悪い影響が出てしまうことにもなりかねません。やはり体を大切にすることが大事だと思います。
井上キャスター:
暑くなりすぎると消費行動が鈍化するという一面もあると思いますが、それ以上に物の価格が上がるということなのでしょうか。
中室牧子さん:
今はそういう面も大きいかもしれませんね。
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<プロフィール>
中室牧子さん
慶應義塾大学教授 教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
髙見知可
TBS報道局 経済部
農水・流通など担当
馬術部時代の愛馬はGIで2着2回