1週間後の福井に期待できる理由は?

橋岡、栁田とも記録への感触は良い。

橋岡は22年シーズン後に練習拠点を米国のタンブルウィードTCに移し、23年シーズンからスプリンターに近い助走に取り組んできた。しかし昨シーズンは3月に8m28(追い風1.4m)を跳んだ以外は、小さな故障が断続的にあって8mを跳ぶことができなかった。今年も5月のクロアチアの試合で脚を痛め、7月の日本選手権は22年までの助走で戦った。

「今は中間を取るような意識で助走をしています。米国で学んだ走りも定着し始めましたが、そっちに振り切ってしまうと踏み切りのリズムが合わないことがわかりました。以前の助走スタイルと上手くミックスさせながら、場面場面に応じた助走をしています。助走前半は米国のスタイルより、しっかり地面を押していますね。体の調子にも左右されるところが大きく、まだ完璧とは言えませんが、なんとなく見えてき始めました」

橋岡は5月の取材で、当時はまだミックスさせることは考えていなかったが、何か気づきがあれば一気に記録に結びつく可能性に言及していた。そのきっかけが以前の助走とミックスさせることであれば福井で、自己記録の8m36だけでなく、日本記録の8m40を更新する可能性もある。

栁田は今季、好調を持続していた。4月の日本学生個人選手権で10秒09(追い風1.8m)、5月の関東インカレでは9秒95(追い風4.5mで参考記録)をマーク。5月のゴールデングランプリは10秒06(追い風1.1m)、アジア選手権も10秒20(追い風0.6m)と、国際大会で2連勝。Road to Tokyo 2025の世界ランキングを大きく引き上げた。日本選手権は失敗してしまったが、7月のワールドユニバーシティゲームズ(ドイツ)も10秒23(向かい風0.7m)で3位に入った。

オールスターナイト陸上では自身に対し、日本記録が出る期待をすることができた。「ドイツから帰国して少し休んだ後に練習してくる過程で、徐々に良い感覚が出てきて、徐々に調子が上向きになってきたので、あとは風などの条件かな、と思っていました」

強めの風が吹くことが多いレモンガススタジアム平塚だが、この日は追い風が0.5mと少し弱めだった。Athlete Night Games in FUKUIで吹く風は天のみぞ知ることだが、良い走りを続けていれば、運が味方する確率も大きくなる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)