戦争犠牲者に心を寄せ、想像力で平和の問題を自分事に
編集部 日本は、この80年、新しい平和憲法のもと、曲がりなりにも戦わずに来ました。ただ、世界を見れば、いろいろなところで紛争はやまずに、今もウクライナ、ガザを初めいろいろなところで大勢の人々の血が流れています。インタビューのお終いに、日本の若い世代の人たちに向けて、中満さんから、戦後80年を踏まえたメッセージをお願いします。
中満 若い人たちは、いろいろな意味で想像力を働かせることがすごく重要なことだと思います。80年前に何が起こったのか。もちろん、戦後80年、日本が本当に平和国家として歩んできて、そのことをしっかりと誇りに思って、これを守っていこうと考えることもものすごく重要です。
ただ、80年前に起こったことは一体どういうことだったのかということを、単に本を読んで勉強する、頭で理解するということ以外にも、戦争で犠牲になった一人一人には名前があって、それぞれの人生があって、家族があって、友人がいて、一人一人の人間だったわけです。そういったところに思いを致していく、心を寄せていく、想像力を働かせていく。そうすると、多分、平和の問題は自分事になってくるのだと思います。
特に若い人たちは、どうも平和というと、国際政治とか、ちょっと難しい、自分とは遠いところにあるように感じる人も多いかと思いますが、実はそうではなく、彼ら一人一人が自分と同じような人間だった。特に戦争で犠牲になったのは若い人たちも多かったわけです。そういう人たちに思いを寄せていくことによって、自分だったらどうだろうということを、想像力を働かせていく。そういったところから、平和への理解を自分事にしていく努力が始まるのだと思います。
そこから、周りの人と議論して、自分に何ができるのかを考えていく、そして行動を起こしていく。そういった点が線としてつながり、多くの人が加わってさらに面になっていくと、恐らく平和は守られるし、つくられるのかなと思います。

若い人たちの果たすべき役割は、多分強大なものがあると思います。彼らこそ、これからの世界を担っていく人たちなわけですから、ぜひこういったことを、この80周年を機会に、今はいろいろな映画、ドラマ、特にこれから夏に向けてそういうものがありますので、そういったところで心で感じて、周りの人たちと考えて、自分なりの行動を起こしていく、自分事にしていくということを、ぜひ考えていただきたいなと思っています。