津波からも猛暑からも身を守らなければならない状況に
この日は、カムチャツカ半島沖の地震の影響で、太平洋側の沿岸地域に広く津波警報や津波注意報が発表されました。警報の発表されている地域では、高台への避難が必要です。ただ、長時間にわたる津波避難は体力も奪われる上、冷房設備のある屋内で退避できるような状況であればまだいいですが、高台の津波避難場所というとそのような環境の整っていないところの方が多いでしょう。
今回は遠地での地震に伴う津波のため、津波の到達までに時間的猶予がありましたが、一刻を争う場合はとにかく避難をすることが最優先で、避難後のことを考えての準備もままならない状態であることも十分考えられます。そうなると、津波から身を守れたとしても、熱中症のリスクが非常に心配です。災害は時季を選んではくれません。
2011年の東日本大震災の津波避難においては、雪の降る中、寒さに凍えながらの避難を強いられた方もいらっしゃいましたが、こうした真夏の災害もまた、厳しい暑熱環境から命を守るための工夫が必要です。今回の津波からの避難については、この現実を私たちに改めて突きつけるものとなったと思います。
(上:津波避難訓練アプリ「逃げトレ」の画面 下:津波避難場所の丘からの景色
ともに筆者撮影)
筆者は5月の終わり、高知県四万十町で南海トラフ地震津波避難訓練に参加しました。「逃げトレ」という訓練アプリを使いながら、海水浴場からの避難を試みました。
その日も強い日差しが照りつける日で、津波から身を守ることのできる高さの丘を駆け上がると、あっという間にへとへとになってしまいました。初夏の陽気ですらそんな状況ですので、猛烈な暑さの中であれば、避難スピードの鈍化も想像に難くありません。いかに暑さを避けながら、できるだけ早く坂や階段を上がって高い場所を目指すか。真夏の避難についても想像を膨らませておく必要がありそうです。
暑さへの備えは、津波避難に限りません。これからの台風シーズンにおいても、停電してエアコンが使えなくなったとき、どう暑さをしのぎながら身を守るかが大事になってきます。電気に頼らなくても涼をとることができるように、ペットボトルの水やネッククーラーを凍らせておいたり、充電式の携帯扇風機を準備しておいたり、対策を考えておきましょう。これからの防災は、「大雨・台風・地震・津波などのハザード+“暑さ”」両方から身を守ることを考えることが重要です。