ムエタイで世界王座を獲得した大分県別府市の男性ががんと闘うため今月27日の試合を持って引退することを決断しました。2度目の手術を控え投薬を続けながらラストマッチに挑む思いとは。
別府市在住のムエタイ格闘家、近藤伸俊さん(40)。今月27日に別府市で行われるラストマッチに向けて、16日も一心不乱にミットを打ち続けました。

プロボクサーの経験をいかしたインファイトとムエタイの大技「ひじ打ち」を武器に持つ近藤さん。2018年に獲得した世界タイトルをはじめ、これまでに4つのベルトを手にしています。
■悪性の甲状腺がん見つかる
格闘技人生を謳歌していた矢先、去年3月に悪性の甲状腺がんが見つかりました。手術は11個の悪性腫瘍を切除し、無事成功。病魔を乗り越えたと思っていましたが、甲状腺に再びがんが発見され、薬を飲む量も増えていきました。
(担当医)「絶対に悪性でないとは言えない。もしも手術するよとなったらこれも取る可能性があります」
投薬治療の影響で、何度も脱水症状に悩まされ、過酷な減量は断念。本来ベストな階級で戦うことはできなくなりました。
トップ戦線からの離脱を余儀なくされ、近藤さんが選んだのが「引退」でした。最後の試合は去年の世界タイトル戦で惜敗したタイ人選手と戦います。
(近藤伸俊さん)「できればヒジで勝ちたいですね。タイトルがかかった試合や大事な試合は右のヒジで切るか倒しているんですよ。今度は最後の試合なので、右のヒジ打ちでKOまでいかなくても切りたい」
格闘家人生の次のキャリアも模索しています。もともと別府市の繁華街でバーを経営していた近藤さん。今年に入って沖縄をコンセプトにした2店舗を開業しました。
暇さえあれば沖縄に向かっていた生活を仕事につないでいました。現役を引退したら、本場のタコスを振る舞う店も手がけたいと考えています。
(近藤伸俊さん)「一番これが好きなんですよ、泡盛の中で。それで置いているんですけど、みんなで楽しくワイワイできるお店を作りたいです」
引退まであと10日。集大成のタイミングが病気によって決まってしまったことに悔しさがないわけではありません。
■「やっぱりノブは強かったと思ってくれる試合をしたい」
(近藤伸俊さん)「スポットライトを浴びてやるかやられるかの世界なので勝ったときは全身の力が抜けるくらい安心と嬉しさがきますね。まだ、全然やれたなというのはありますね。病気さえなかったら、もしかしたら40歳までといっていたけど『あと1年』と言ってズルズルやっていたかもしれませんね」
どんな逆境でも前を向いてきた近藤さん。病魔に冒され、難敵が待ち受けていても、最後まで揺らぐことなく自らの強さを追い求めます。
(近藤伸俊さん)「最後は完全決着という形で決着はつけたいと思います。最後に見てくれた人たちにやっぱりノブは強かったなと思ってくれるような試合をしたい」