幅「約3.6m」の道に横幅「約4m」の鉾を通す!?屋根方がみせる妙技
そして17日の本番当日。大粒の雨が降る京都市内。
(升田達哉さん)「勘弁してください。なんか悪いことしたか」
足場が悪い屋根の上はより危険性が高まります。巡行は四条烏丸を出発し、京都市中心部をぐるりと一周するルートです。難所となるのは四条河原町の交差点を90度方向転換する「辻回し」。そして細い路地に町家が立ち並ぶ新町通りの2か所です。
迎えた最初の難所、四条河原町の交差点。「ささら」という竹を敷いて鉾を90度回転させる「辻回し」が行われます。
屋根方は1本の命綱だけを頼りにじっと揺れに耐えます。京都市役所前を再び「辻回し」で抜けると最大の難所・新町通が待ち構えます。すると…
(升田達哉さん)「やだね、緊張するね」
思わず漏れた升田さんの心の声。新町通は最も狭いところで道幅が約3.6m、それに対し鉾の横幅は約4m。鉾が周りの建物などと衝突する可能性があります。
(升田達哉さん)「一発かまして!一発かまして!かましてかましてかまして!!」
この日一番の大声をあげる升田さん。鉾が電柱や建物にぶつからないよう車輪の進行方向の調整を指示します。それでも鉾がぶつかりそうなときは、力づくで電柱を押して屋根との隙間を作るのです。
(函谷鉾・屋根方)「ちょっとシビアやね、シビアやね」
(升田達哉さん)「一発かまして、かましてかまして、もう一発。もう一発」
電柱を押すことで数十cmの隙間が確保。この隙間作りこそが屋根方の妙技とも言える”空中戦”なのです。
新町通を何とか通過。約5時間に及んだ山鉾巡行。無事に鉾は帰ってきました。
(升田達哉さん)「おかしいですよ(棟梁との)出会いから始まって、こんなところに乗せてもらって、こんな経験なんてなかなかない。楽しかったというのもありますし、ありがたいなという感じで乗っていました」
高い技術と集中力で「安全」を守る。そこには伝統を支える誇りがありました。
(2025年7月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)