なぜインドは世界で勝てるのか?優秀な人材を育む3つの土壌

野村:
浜田さんがインドを取材されて、なぜインドが「優秀な人材大国」だと言われるのか、その理由をどのように感じましたか?

浜田:
実際に訪れてみて、インドには人材大国になる素地があると強く感じました。理由は大きく3つあります。まず1つ目は、圧倒的な人口と理系教育です。人口14億人という母数の多さに加え、小さい頃から数学教育に非常に力を入れています。勉強のできる子どもは、男女問わずほとんどが理系に進み、その最高峰がインド工科大学(IIT)です。国内に23校ほどあるIITに、毎年約50万人が受験するということで、学生はすさまじい競争を勝ち抜いています。

2つ目の強みは、多様性から生まれるマネジメント能力です。インドにはもともと20以上の公用語や多くの宗教が存在し、非常に多様な環境です。そのため、異なる背景を持つ人々をまとめるには、ひとつひとつ論理的に説明し、理解を得るプロセスが不可欠です。この経験が、グローバル企業で多様な人材をマネジメントする際に、ごく自然に活かされているのです。

野村:
なるほど。育った環境そのものが、グローバルなリーダーシップを育んでいるのですね。

浜田:
そうです。自分のやり方を押し通すのではなく、相手の文化や慣習を理解してリーダーシップを発揮する「シチュエーショナル・リーダーシップ」という考え方も聞きました。Googleのピチャイ氏らが持つと言われる「共感力」の高さも、こうした背景から来ているのかもしれません。そして3つ目が「ジュガール」という精神です。

野村:
ジュガール、初めて聞きました。

浜田:
「ないならないなりにやる」という目的達成思考です。インドはインフラが未整備な部分も多く、問題が起きても完璧な環境を待つのではなく、今あるもので何とかして乗り越え、ゴールを達成する。その場の知恵でやり遂げる「ストリートスマート」な力強さが、変化の激しい今の時代に非常に合っていると感じました。