「日本人ファースト」なぜ刺さった?

藤森祥平キャスター:
参院選が終わって1日が経ちました。米重さん、参政党の躍進についていろいろデータ集まってきましたか?

JX通信社 米重克洋さん:
そうですね。私が一つ注目しているのは、やはり開票結果の中でも、議席を獲得したのは主に都市部なので、参政党の支持っていうのは都市部で強いんじゃないかと見られているんですが、実際の得票率で見ると、実は地方の選挙区ほど高いっていうことがわかってきているんですよね。

東京選挙区で2位当選したさやさん。9.6%の得票率なんですけれども、例えば群馬県、これ情勢調査とかだと参政党が自民党に迫ってるんじゃないかと言われている部分ですが、実際に票を開けてみてもやっぱり、参政党の青木ひとみ候補が得票率31.5%と、東京の3倍ぐらいの得票率なわけですね。

鹿児島においてもやはり、参政党が2割以上の得票率を獲得していると。これもちろん1人区ですから、他の党の候補が少ないとか、選挙の構図による部分も勿論あるんですけれど、とはいえ全国を見渡してみたときに、いわゆる保守地盤とか、自民党王国というふうに今まで言われてきたようなところで、どうも参政党の得票率が高いなというふうに感じています。

この部分について、どう考えるかっていうことなんですが、一つは地方の保守地盤で、文化的に右よりな主張、例えばジェンダーに対するちょっと後ろ向きの発信だとか、あるいは外国人に対する厳しい政策、こういったものも含めた主張が、地方の保守層に対して、結構響いてる可能性があるんじゃないかなと思っています。

こういう現象ってどっかで見たことがあるなと思うんですけど、それはズバリ「トランプ現象」なんじゃないかというのが、私が考えてるところなんです。

実際にそこをちょっと考えたので、選挙戦の中盤に私どもJX通信社とTBSテレビ合同で行った調査の中で、「トランプ政権の政治姿勢についてどう思いますか?」とこういうことを聞いたんです。

そうしたら、やっぱり参政党の支持者の方に、「トランプ政権の政治姿勢に共感する」っていう方がかなり多くいらっしゃいました。4割近くの方が強く共感をされていたということがわかったんです。

他の党の支持層と比べて圧倒的に特徴的な部分で、やはりそういった「日本人ファースト」というキャッチコピーだけじゃなくて、まさにそのスタンスとか、保守的な政治姿勢とかそういったもの全体が、今まで自民党に投票してきたような人たちにも刺さってるということが選挙結果に表れているんじゃないかなと分析してます。

小川彩佳キャスター:
支持者もトランプ氏に共鳴している。また実際に神谷代表自身もトランプ氏の言葉遣いから多くを学んだと話したと、ニューヨーク・タイムズなども伝えていますし、海外メディアもかなり注目しているようです。

ただ外国人政策に関してはかなりミスリードがあったりですとか、誤情報も発信の中に含まれていたということが、この選挙戦の最中にも伝えられてきましたけれども、そうした発信・情報というのは、支持者の方の投票行動に影響するってことはなかったんでしょうか?

JX通信社 米重克洋さん:
そうですね。ある程度影響した可能性はあるんですけれども、少なくとも選挙の得票率を見ると、それが参政党の得票数を決定的に減らすような影響は、おそらく見られなかったということだと思います。

先ほどのVTRの中でも紹介されていましたけれども、参政党の支持層の中で、いわゆるテレビや新聞の情報というのは概ね信用できないと。

これを「敵対的メディア認知」という心理学的な用語があるんですけど、そういうマスメディアの報道は偏っていると認知するような心理的傾向、これを持ってらっしゃる方が参政党支持層の4割ぐらいいらっしゃったんですね。

この4割ぐらいの方は、ある程度、参政党支持層のコアな方だというふうに見なすとすると、多分こういった方々は、おそらくマスメディアが参政党の主張に対して批判的に検証したとして、むしろ批判的に検証しているからこそ、参政党のことをやっぱり信頼できるとか、その主張は決して間違ってないと、そういうふうに強化していく側面があるんじゃないかなと思います。

小川彩佳キャスター:
星さんは長く政治をご覧になってきましたけれども、この動きというのは?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
ざっくり言うと、この参政党は自民党の右の部分を食ったのと、今まで投票に行かなかった若い人を投票所に行かせたということなんですけど、今後の課題は私二つあると思うんですね。スタッフをどう揃えるか、そんなに優秀なスタッフが世の中にいっぱいいるわけじゃありませんので、政策作りをどうやって進めていくか。

それから、エッジの効いたことを今まで言ってきたんですけど、これから法律を作ったり他党と交渉をするときは、それを丸めなくちゃいけないので、そうすると、党内に「話が違うじゃないか」っていうハレーションが起きますので、その辺をどういうふうにやっていくか、これ実際にはなかなか難物なんですよね。

藤森祥平キャスター:
一方、少数与党・自公は、参政党に歩み寄ったり近づいたりするんですかね?

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
今の石破さんの体制は、どちらかというと自民党の中ではリベラル系ですので、参政党に対しては距離を置いていますし、一方で野党の立憲も参政党とは組めないという体質ですので、参政党はどこと組むのかっていうのは、しばらく先のお話になると思いますね。

小川彩佳キャスター:
それにしても今回、顕在化した国民の深いところにある思いというのは、今後も検証していく必要というのがありそうですね。

JX通信社 米重克洋さん:
今後、世論調査などで、支持層の動向とか分析が進んでいくと思います。

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〈プロフィール〉
米重克洋さん
JX通信社 代表取締役
世論調査や選挙分析などを手がける

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県」」