背中を押した「長男の一言」すべてを変えた
1人で家計を支え、2人の子育てに追われ、多忙を極めました。
そんな日々を過ごして15年が過ぎたころ、国枝さんの人生を大きく変える出来事があったのです。
(書道家 恵(国枝恵子さん))
「2023年ごろに知り合いの方から、 『氣』 を書いてほしいって依頼があって」
「それをなんで私に言ってきたかも、記憶としてないぐらいなんですけど、『ちょっと書いてみて』って軽い感じで言われて」
45年ぶりに筆を手に取った国枝さん。2か月かけその「氣」【画像⑮】の一文字を書き上げたことで、再び書く喜びに目覚めました。

この時60歳。このまま人生を終えていいものかと葛藤していた時期に、たまたまSNSで見つけたのが「ニューヨーク国際書道展」でした。
「普通の主婦の私などが」と、応募に二の足を踏んでいた時に、背中を押してくれたのは長男だったといいます。
(書道家 恵(国枝恵子さん))
「『お母さんに足らないものって、まあ一歩前に出るだけのことやから、チャレンジしたらいいんじゃない』って息子に背中を押されて。いやー、本当に一番刺さりましたね、息子の言葉が」
意を決して応募した作品が、ニューヨーク国際書道展で「準優秀賞」を獲得。このとき、書道家としての新たな人生が動き始めたのです。
(書道家 恵(国枝恵子さん))
「本当に一夜にして、自分の『思考』も『決意』も『覚悟』もそこでバーンって入った感じです。国枝恵子というより、書道家 恵がそこから走り出したっていう」

ニューヨークでの受賞をきっかけに、イタリアやパリから書の展覧会のオファーも【画像⑰】。

来年2月には、日本美術協会が運営する「上野の森美術館」の展覧会への出品も決まっています。思いもよらなかった、シンデレラストーリーです。

(書道家 恵(国枝恵子さん))
「『やる、って言ったらやれるもんなんだな』というのが分かりました。『一歩前に出る、一歩前に出たら何かが起こる』っていう。それは私だけじゃなくて、きっと周りも一緒だと思います」

11月には菩提寺の本行寺での個展も決定。故郷に錦を飾ります。
勇気を出して一歩踏み出せば人生は変わる。それを体現した書道家 恵こと国枝恵子さん。その意欲は、63歳となった今でも、まだまだ衰えることを知りません。
