■「米国と世界の安全は島しょ国にかかっている」米国の動きに不安の声も

8月下旬、パプアニューギニア北部にあるマヌス島には、街中でランニングするアメリカ兵の姿が。

実はいま、パプアニューギニア軍の海軍基地はアメリカの支援を受けて拡張工事が行なわれていて、工事を技術的にサポートするため、常に60人ほどのアメリカ兵が滞在しているという。中国の影響力拡大に対抗したとみられる。

9月、バイデン大統領は太平洋島しょ国の首脳を招き、初の会議を開いた。

バイデン大統領
「アメリカと世界の安全保障は太平洋島しょ国にかかっています。私は本当にそう思っています」

そして島しょ国に約1200億円の経済協力支援を表明した。ほぼ自給自足のマヌス島では新たな雇用が生まれると期待する声も…

地元の運転手
「2週間前、地元住民に対して求人があったよ。たくさんの人が応募したんだ」

一方でアメリカの動きに不安を感じる人も…

マヌス島の住人
「アメリカは安全や高度な技術をもたらしているかもしれないけど、私たちの土地を再び脅威にさらしていると思う。アメリカは他の国と問題を抱えていて、彼らはパプアニューギニアにそれを持ち込んでいるんだ」

この地もかつて旧日本軍が玉砕した場所だ。島には日本政府による遺骨収集の碑が、いまもひっそりと残されている。日米の争いに巻き込まれた悲しい記憶は、パプアニューギニアの人たちに語り継がれている。

ラバウルの住人
「おじいさんは日本軍のために働いていました。2018年に亡くなりましたが日本語が話せました。おじいさんはまだ子供でしたが、日本軍の下で海水から塩をつくっていたんです。軍に従わないと彼らは首を切ったそうです」

戦闘の巻き添えになったほか、殺害されるなどして多くの住民が亡くなった。80年近い時を経て、また戦争の脅威にさらされることになるのではないか。そんな懸念も生まれつつある。

■しのぎを削り合う米中 その間でパプアニューギニアの人々は

現地の人に大きく浸透していた、中国は「良い国」という印象にも変化が現れ始めていた。政府の仕事に携わる人たちからは…

公務員
「長期的には政治家が変わっていろんなことが変われば、中国人が土地に手を出し、奪う恐れはあると思っています」
「中国から与えられるものがあまりにも多くて、将来私たちは何を返せばいいのだろうという不安をもっています」

しのぎを削りあう米中に、警戒感を抱き始めた現地の人たち。軍の司令官はパプアニューギニアをとりまく現状についてこう話す。

パプアニューギニア軍司令官
「今の地政学的状況は厳しいと認識しています。小さな国ですが、この地域をめぐって起きていることを心配しています」

パプアニューギニアの前首相、ピーター・オニール氏は中国による支援や企業が投資しやすい環境を整えた立役者でもあるが、今の中国の動きをこう懸念する。

ピーター・オニール前首相
「とても深刻に受け止めています。私たちは第二次世界大戦や世界中で起きている紛争のような経験を繰り返したくないのです。どの国の軍事施設もこの地域に入れたくはありません。それが平和と秩序を守る方法です。中国とアメリカの間でおきている地政学的な議論の中で、私たちは板挟みになっています。私たちは安全保障の分野で中国と何かをしようとはしていません」