いまアメリカと中国という2つの大国が、南太平洋の島国との関係強化に乗り出しています。中でも最も大きな国土を持つパプアニューギニアで起きている、米中対立の最前線を取材しました。
■街中のいたるところに「中国援助」の文字
国内に800の言語があると言われるほど、多様な人々が暮らすパプアニューギニア。人口は太平洋島しょ国の中では最大の約900万人。天然ガスなどの資源も豊富で、この地域では大国でもある。

未明、首都ポートモレスビーに到着した飛行機は、中国からの出稼ぎ労働者でいっぱいだった。中国の3倍、月に1万5000元(約30万円)近くは稼げるということで渡航を決めたという。彼らの向かう先は建設現場だ。

近年、ポートモレスビーでは中国企業によって建てられているビルが目立つようになっている。民間の建物だけではなく裁判所など政府の施設も中国企業によって作られていた。

政府がいま進めている大規模な公務員住宅の建設用地でも既に中国企業が建設に着手している。街中のいたるところに「CHINA AID(中国援助)」と書かれたモニュメントが置いてあり、道路脇や建物の目立つところに中国の援助で作られたことを示すマークがついている。

■「オーストラリアとの関係は深いけど…」「中国は良すぎる」
中国の影響が色濃く見えるが、実はパプアニューギニアの最大の援助国かつ貿易相手国はすぐ南に位置するオーストラリアだ。スーパーマーケットにはオーストラリアからの輸入品がずらりと並んでいる。
旧宗主国として長年影響力を持ってきたが、伝統的な海上生活をする人々の集落を訪ねると…

家の中まで電気は通っていて、ガスも使えるようになっている。しかし水道はないため汲みに行かなくてはならない。

市民
「オーストラリアとの関係は深いけど、発展への貢献はあまり感じない。発展するようになったのは中国が来るようになってからだ」
2022年のパプアニューギニアの予算書では、中国からの援助額は約200億円と見込まれている。額としてはオーストラリアの半分だが、現地の人たちにとっては中国の方が発展に貢献していると映っている。
橋の建設に携わった若者
「(中国のおかげで)道もできたし、街灯もできたし、橋もできた。うれしいよ」

政府間の合意のもと、現地のインフラ整備などに投資する中国企業には、10年間の所得税免除といった優遇がある。現地で複数の会社を経営する中国人は…

パプアニューギニアの中国人経営者
「政府間の合意によって良い投資環境ができたね。パプアニューギニアが良くなれば中国も良くなるし、パプアニューギニアはもっと良くなる」
中国の進出がパプアニューギニアのためになるという。
さらに、中国人が経営する雑貨店を訪ねると…
ーーここで商売をしてどのくらい?
中国人店主
「21年だよ。中国人は増えた。前は数百人だったけどいまは2~3万人はいる」

オーストラリア製のものと比べ、中国製品は安い。それが“中国は良い国”という印象を現地の人たちに浸透させている。
住民
「中国は良すぎるね。村の人にとっては、大きな店は高すぎて物を買えないけど、中国人のお店に行けばとても安く買える。だから中国人の店に行くのさ」
■経済協力の先に・・・「中国が軍事基地を手に入れるかもしれない」
一方、経済的な結びつきが強まるにつれ、高まっている懸念がある。それは軍事的な面での影響力だ。パプアニューギニアのシンクタンクの専門家はある計画の名前をあげる。