日本テレビの活用をきっかけに、新たなソフトウェアを開発

この「鮮明化」と「復元高解像度化」の技術が、テレビの放送でも使えることがわかってきた。

いち早く取り入れたのは日本テレビ。2024年1月2日に羽田空港で発生した、日本航空516便と海上保安庁の航空機による衝突事故で、情報カメラの映像を「ロジック・アンド・デザイン」が鮮明化処理した。

「日本テレビさんから相談があって、情報カメラの映像を鮮明化したところ、それまでは見えなかった、滑走路を移動する海上保安庁の航空機が見えるようになりました」(坂井さん)

日本テレビとその後も映像の鮮明化を行っていく中で、テレビ放送の分野で自社の技術が役立つのではないかと気づくようになったと坂井さんは話す。

「災害や事件、事故を伝えるニュースでは、暗い場所で撮影された映像や、悪天候の中で撮影されている映像は、見えにくくなっているケースが多いようです。また、最近では衛星写真が使用される機会が増えているものの、ピンボケしていることが多いのではないでしょうか。当社の技術が貢献できる部分があるとわかってきました」

そこで、「ロジック・アンド・デザイン」では、「鮮明化」と「復元高解像度化」の技術を連携させたソフトウェアを今年3月に開発した。

画面左側にはパラメーターがあり、まずは上部にある補正やコントラストの強度を変えるスライダーを動かして、「鮮明化」を行う。続いてその下に並ぶスライダーを使ってピンボケを解消していく。

簡単な操作で事件や事故の映像を鮮明化できるとともに、画質が劣化したアーカイブ映像なども鮮やかに復元できるようになった。

ただ、放送分野で活用していくには、まだ課題もある。「鮮明化」の場合、伝送する際やファイルを圧縮する過程などで、目に見えにくいノイズまでが強調されることがある。

また、「復元高解像度化」ではピンボケを解消する計算に重い処理が必要なため、今年3月に開発した「鮮明化」と連携したソフトウェアでは静止画のみの対応であり、動画は簡易的な復元高解像度化の処理までしかできないのが現状だ。