医療現場や防犯カメラなどで普及した技術

この技術を開発した会社が、東京都新宿区に本社がある「ロジック・アンド・デザイン」。鮮明化の技術は、現在の副社長が原子力発電所の監視カメラの映像をよく見えるようにしようと、画像処理を始めたのがきっかけだった。その技術を知った医療業界にいた現在の社長が、眼科や外科などで手術をする現場に使えると考えて2018年に創業した。

「鮮明化」の技術は、ハードウェアをカメラとモニターの間に接続する方法か、パソコンにソフトウェアをインストールする方法で使える。

一方「復元高解像度化」は、現在はソフトウェアだけで対応している。いずれも独自の技術で、関連する特許を多数取得している。

このベンチャー企業に異業種から転職したのが、プロジェクト・マネジメント本部ビジネスデザイン部長の坂井康文さん。2024年10月に入社し、マーケティングや新規事業開発などを担当している。「鮮明化」技術を次のように説明する。

「ロジック・アンド・デザイン」ビジネスデザイン部長 坂井康文さん

「カメラで識別できる明るさの範囲を、ダイナミックレンジといいます。ダイナミックレンジが狭くなることで暗くなったり、明るくなりすぎたりします。この狭くなったダイナミックレンジを、独自に開発したアルゴリズムによって拡げることで、画像データの再現性を高めることができました。画像の最も小さな単位である1ピクセルごとに処理を行うことで、ハードウェアで接続している場合は、ほぼリアルタイムでの鮮明化が可能です」

一方、「復元高解像度化」は、ピントがぼけている画像を、ぼけていない状態に復元する技術だ。

ピンボケはカメラなどの光学系において、被写体から像に変換される際に理想的に変換されずに生じたずれや、フォーカスのずれによって、本来は1ピクセルに集まるべき光の線が、周囲に広がって分布していることが原因だ。

この分布の状況は、「点拡がり関数」で表すことができる。「ロジック・アンド・デザイン」ではこの関数を算術的に最小化して、光の線を1ピクセルに集めることによって、解像度を改善している。

「鮮明化」や「復元高解像度化」を行うハードウェアやソフトウェアは、これまで医療現場のほか、防犯カメラなどの産業インフラに導入されてきた。

国土交通省の河川の監視では、「ロジック・アンド・デザイン」の技術が導入されているところも全国に広がる。河川の増水などを夜間でも確認できるのが利点だ。

河川監視カメラの元映像
河川監視カメラの「鮮明化」処理後の映像

また、警察の警備や捜査の現場でも導入が進んでいる。皇宮警察本部の監視カメラにも採用されており、映像の鮮明化により安全な警備に貢献している。

夜間監視カメラの映像
「鮮明化」処理後の夜間監視カメラの映像

捜査の現場では、ドライブレコーダーの映像の解析や、カメラに暗く映っている人物の顔などを鮮明化するといった使われ方をしている。これらの処理は、前述したように、生成AIによって画像を生成したのではなく、あくまで本来記録されている画像の見えなくなっている部分を見えるようにしたものなので、裁判資料としても採用が可能だという。