■原発を抱える地域が戦地化することへの懸念

2月9日、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が会見を行い、金平キャスターが質問を行いました。

ーー2014年のドネツク・ルガンスクの内戦状態の取材に伺って、ウクライナの人達同士が
殺し合っているのを見てとても悲しい思いをしました。

コルスンスキー駐日ウクライナ大使:
「まず、あなたが言った『内戦』という表現について全面的に否定したい。(親ロシア派武装勢力は)ロシアの正規軍と連携をとっているのですよ。それが内戦ですか?」

コルスンスキー駐日大使は、ウクライナが人類史上初めて原発を抱える戦地と化すことへの危機感も露わにしています。

コルスンスキー駐日大使:
「ウクライナ全土が攻撃されたらどうなるか。人類史上初めて15基の原発と石油ガスパイプライン網や化学工場が戦地と化してしまうのです。北部の首都キエフ周辺にはチェルノブイリがあります。原発事故の放射性物質によって汚染された地域です」

■繰り返してはならない原発事故~放射能汚染で苦しむ住人

現在、ウクライナ国内にはあわせて15基の原発があります。

1986年4月、史上最悪のチェルノブイリ原発事故は旧ソ連時代に起きた事故です。ソ連から独立し、事故から35年以上過ぎた今でも、周辺住民は事故の影響に苦しめられています。

ウクライナ北部のナロジチ村は、チェルノブイリからおよそ70キロ離れているものの、事故当時の風向きで高濃度の放射性物質に汚染された地域です。ナロジチ村で生まれ育ったタチアナ・ルーチコさんは事故当時16歳でした。

旧ソ連政府が事故を隠蔽したことも被害拡大につながり、ルーチコさんは事故からおよそ5年後に長男を妊娠した際、放射能による被害が明らかとなりました。

長男を出産したあと流産と死産を繰り返し、ようやく授かったのが娘・マリアさんです。マリアさんは今、この村で教師として働いています。

ルーチコさん:
「流産が4、5回ありました。チェルノブイリの事故が原因だと言われました。同じ事が起こらないよう子どもにも事故のことを伝えていきます。悲劇が起こらないために」

マリアさん:
「私を産んでくれた事に感謝しています。私も自分の子どもを産み、ずっとこの村で暮らしていきたいです」

マリアさんは、心臓と甲状腺に疾患を抱えており、医師からは放射能による被害が原因だと
指摘されたと言います。

マリアさん:
「いつも調子が悪いし息切れします。医師から甲状腺の検査をして下さいと言われました。甲状腺の病気は原発事故と関係があると思います。医師にも『その地域に住んでいるので当然だ』と言われました」

ナロジチ村はロシア軍が活発に活動しているベラルーシとの国境から50キロの近距離にあることから、タチアナさん一家は今も続く放射能被害とともに、戦争でさらに村へ被害が及ぶことを懸念しています。

マリアさん:
「もちろん不安です。何かあったらこの村は首都(キエフ)への通り道になるので」

ルーチコさん:
「ロシア人というよりもロシアの大統領が悪いのです。ロシア人全体ではありません。良い方向へ向かうと希望は持っています」

マリアさん:
「私の夢は平和と皆が健康でいられることです。戦争が起こらないように」