「温泉むすめ」で旅館の再建と観光の復興を目指す

一方で、足踏み状態が続いているのが「宿泊施設」です。
ミシュランガイドにも選ばれた宿「お宿 たなか」。しかし、予約の帳簿は…

お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「お盆は全然まったく。お盆の土曜日でさえ埋まらないんです。(例年の)1割も動いてないと思います」
復興関係者の予約もなくなり、危機感が募ります。
お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「8月が山場だなと思ってるんです。今年の8月、もしも、それほど人が来なかったら、多分、観光の戻りは相当遅い気がするんです」

地震と豪雨の「二重被災」に見舞われた宿には、今もその爪痕が残っています。
今後、観光客は戻ってくるのか。そんな不安から修繕をためらっています。

お宿 たなか 田中孝一さん(62)
「能登を応援したいっていう方々が来るので、ある程度は何とかいけるのかなと思いはあることはあるが。来年、再来年、その次の年になったときに、どうなのだろう。
私もこの宿を継いで、やがて30数年経ちますけれども。これだけ観光のことに関して、何をどう向かえばいいか、わからなくなったのは初めてです」
ただ、そもそも輪島市で営業を再開した宿泊施設は半数程度に留まっているのが現状です。
【輪島市の宿泊施設】(6月13日時点)
条件付き営業…20件
休業中…22件
廃業…6件
※輪島市観光協会によると

輪島を代表する旅館のひとつ「輪島温泉 八汐」。中規模半壊と判定され、公費解体で取り壊される予定です。

日本海が一望できる眺望も、屋上から見える街並みも、もうすぐ見ることができなくなります。

輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「能登の黒瓦の漁師町の風景ってなかなか良かったんですけどね。いい景色だったんですが…」
裏山が崩れるなどの被害もあり、同じ場所に旅館を立てられるのか、営業が再開できるのは何年先になるのか…見通しはまだ立っていません。
そうした状況でも常務の谷口さんは、輪島の観光を復興をさせようと動き出しました。
目をつけたのは「温泉むすめ」というプロジェクトです。

「温泉むすめ」は、地域活性化を図ることを目的に、日本各地の温泉地をキャラクター化したコンテンツで、東京にある企業が企画・運営しています。
谷口さんは、運営会社からの支援を受けて、輪島温泉にも「温泉むすめ」を作ろうと考えたのです。
まずは10月に「お披露目イベント」を開催する計画です。

輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「一過性の、一発だけのイベントじゃなくて、また来年、再来年と、何とか続けられるような。皆さんに応援していただければ嬉しいなと思います
エンバウンド 橋本竜 代表
「全力で頑張ります」
「温泉むすめ」が輪島の観光復興にどうつながっていくのか。旅館の再建を目指しながら、 谷口さんの模索が始まります。

輪島温泉 八汐 谷口浩之 常務(52)
「宿が建ってから、観光の新しいコンテンツを作り始めても遅いので。今のうちに輪島の新たな観光の魅力を、発見とか再構築するというのは、宿泊業を再建したときに役立つし、両方やらないと、自分の商売も町の復興にも繋がらない」