■「埼玉にキタリス」が暗示する“良くない将来”とは

リスは森の中でうまく適応しながら生きています。だからこそ、環境変化が進むと、そこは住みやすい森でなくなってしまうおそれがあります。

気候変動の影響が大きく出ている問題は、マツ枯れです。マツ枯れとは、カミキリムシの媒介によって病原体が運ばれ、マツの木がどんどん枯れてしまう現象。ニホンリスやキタリスは、いわゆる松ぼっくりが重要な餌のひとつですので、マツの木が大量に枯れてしまうことは深刻な問題です。
地球温暖化による気温上昇で、カミキリムシの生息域が拡大しているため、マツ枯れに悩まされる地域も今後は拡大していくという予測データがあります。森の環境や植生が変わることは、リスたちにとっては、ある特定の地域で生息が難しくなってしまう地域的絶滅の危惧が出てきます。

1980年~2000年頃のことですが、埼玉県の狭山丘陵に、本来いるはずのないキタリスがいたという事実がわかったそうです。狭山丘陵と言えば、「となりのトトロ」の舞台になったといわれているエリアで、とても自然豊かな場所です。内陸ですので冬の冷え込みは強いですが、キタリス本来の生息地である北海道と比べると、気候的には全然違います。それに伴い、植生も北海道とは違うことでしょう。その狭山丘陵にキタリスがいたというのですから驚きます。

もしも、となりのトトロという作品がもう少し後に描かれていたのならば、アニメの中にリスが登場していたのかな?と妄想までしてしまった私。北海道にしかいないキタリスが狭山丘陵にいたなんて!と高ぶる気持ちが全く無いと言ったらウソになりますが、問題は生態系への影響です。ある本で、リスの生息域が従来と変わってしまうことは、遺伝子的な乱れ(攪乱)が生じ、固有種の存続が危ぶまれることになると読みました。リスファーストで考えると、狭山丘陵でのキタリスの生存は良くない将来を生み出してしまうことに繋がってしまうんですよね。

可愛いだけじゃなくて環境の変化をも教えてくれるリスたちからメッセージを受け取るために…。
私は今後もリスに会いに行き、観察し、リスグッズも集めます。
リス活に忙しくなりそうです。

参考:「リスの生態」(著・田村典子)、「シマリス完全飼育」(著・大野瑞絵)