ウクライナとロシア、3度目の停戦交渉がおこなわれるも隔たりが。キエフ陥落間近とも報じられている中、ゼレンスキー大統領が亡命する可能性は?経済制裁が続き、プーチン大統領が失脚する可能性は?今後考えられる展開を見ていきます。
■3回目の交渉も合意に至らず
井上貴博キャスター:
ウクライナ情勢の今後のシナリオに関しては5つある、いや6つあるなど様々な論じ方があるようですが、2つに絞ってお伝えをしていきます。
7日に3回目となる停戦交渉が行われましたが、難しさというのは変わっていません。「人道回廊」についてロシア側は「8日から機能することを期待する」と言っていますが、ウクライナ側は「わずかに前進があった」と述べ、本格的な停戦については合意には至らなかったとみられます。
■シナリオ1 ゼレンスキー大統領の亡命
今後考えられうる、まず一つ目の可能性ですが、ゼレンスキー大統領の亡命です。アメリカ国防総省高官によりますと、ウクライナ周辺に集結したロシア軍のほぼ100%がウクライナ国内に侵入したとみられるということです。「キエフ陥落後陥落間近か」と報じられていますが、ずっとこの状況は続いています。
アメリカのCNNによりますと、米国・欧州の当局者はゼレンスキー大統領が亡命した場合、西側諸国が亡命政府をどう支援するのか、既に検討に入っているとのことです。「既に」といいますか、かなり早い段階で、水面下でヨーロッパ各国やアメリカなどで話し合いが行われていたのではないかということが新たにわかってきました。実際にイギリスのジョンソン首相も「ウクライナ亡命政府」樹立なら受け入れる姿勢を示しています。
亡命政府は過去に何度もあったことではありますが、軍事占領や内乱などで亡命した首脳などが国外で樹立する政府組織のことを指します。笹川平和財団の畔蒜泰助(あびる たいすけ)主任研究員は「ゼレンスキー大統領は亡命政府をつくり、西側からゲリラ戦を続けていくのではないか」と話しています。
ゼレンスキー大統領としては亡命政府を国外に作ることで、西側から協力を得てゲリラ戦を続けていくということなんですが、ウクライナに残されたウクライナ人に危険が及ぶ恐れは多分にあります。というのも、ロシアはロシアで傀儡政権を独自にウクライナに成立させる、そしてウクライナを実効支配するということなんです。しかし、そこに正当性はないということを訴え続けるしかないということになってくるようです。
畔蒜主任研究員は「ロシアがウクライナ国内に“新政府”(傀儡政権)を作ったとしても、国際社会が認めるのは、ゼレンスキー大統領率いるウクライナの“亡命政府”になる。世界各国からロシア“新政府”の正当性は認められないのではないか」と話しています。
ゼレンスキー大統領は一時的に国外に亡命してタイミングを見計らって落下する、これは過去にもフランスなども行った手法ではあるわけですね。
ホラン千秋キャスター:
2つの政府が生まれてしまった場合、どのように政治が行われていくんでしょうか?
星浩 TBSスペシャルコメンテーター:
ヨーロッパの人にとって亡命政府というのはあまりマイナスイメージがないんですよね。典型的なのはフランスで、ナチスが傀儡政権を作ったけれども、ド・ゴールさんが亡命して最終的にはナチスを追い出して勝利したというのは、ある意味では栄光の歴史として語られてるわけです。
ですから今回、仮に亡命政府をゼレンスキーさんがつくってもおそらく国際社会のほとんどはゼレンスキーさんを支持しますし承認もするわけですので、あまりロシアにとってプラスになるとは思えないですし、むしろ深刻なのはプーチンさんにとってこの戦争のゴールが見えなくなってきたことだと思うんですね。つまり、仮にキエフを占領して、キエフにロシアの戦車が入ったとしても、それでこの戦争に勝ったと言えなくなってくるわけです。
・亡命政府を作られてしまう
・ウクライナのほとんどの地域で反ロシア感情が高まってくる
・国際社会はロシアを批判している
というわけですので、どうすればこの戦争に勝てるのか見えなくなったというのはプーチンさんにとっては極めて深刻な状況だと思いますね。
ホランキャスター:
そうすると次の動きとしては、亡命させない、それを阻止する、というところがプーチン大統領としては重要になってくるわけですか?
星コメンテーター:
そうでしょうね。亡命をさせないで、ゼレンスキーさんを逮捕しちゃってそこで裁判にかけるといった方法はあるんですけど、おそらくその程度ではウクライナの人たちはくじけないと思うんです。さらに国際社会もそれで“プーチンさんが正しい”というふうに方向転換するとはとても思えないので、そういう点ではもうプーチンさんは間違った回路の方に入ってきちゃって、なかなか戻りきれないというのが現状だと思いますね。
井上キャスター:
ゼレンスキー大統領は新たに公開した動画で、「私はここ、首都に残るんだ」ということを世界に発信しています。