米中が巨額投資 ヒト型ロボットが普及する未来とは?
comugi:これまでは中国メーカーの話が中心でしたが、もちろんアメリカも黙ってはいません。米中が今、最も熱い分野として巨額の投資を行っているのが、本格的な「ヒト型ロボット」です。
野村:ヒト型ロボットですか。
comugi:昨年、世界のヒト型ロボット分野への投資額は14億ドル(約2160億円)に達し、その大半をアメリカと中国が占めています。アメリカの大手金融機関シティグループは、2050年にはヒト型ロボットの世界市場が6億4800万台に達する可能性があるという予測を出しました。
野村:6億4800万台!2050年の世界人口を考えると、およそ10人に1人がロボットという世界ですね。
comugi:この状況は、iPhoneの普及になぞらえることができるのではということで、いわば「iPhoneモーメント」を迎えるのではないかといわれています。
物理的な仕事も代替される時代の幕開け
野村:「iPhoneモーメント」とは、どういうことでしょうか?
comugi:これまでの配膳ロボットなどは、特定の用途に特化した「専用機」でした。それに対し、汎用性の高いヒト型ロボットは、人間の様々な動きをソフトウェアとしてインストールできます。まさにアプリケーションです。私たちがiPhoneに熱狂したのは、1台でゲームやSNSなど様々なアプリが使える可能性に驚いたからですよね。
野村:なるほど。用途が限定されたロボットから、アプリで機能を追加できる汎用的なヒト型ロボットへの移行が起きるということですね。
comugi:その通りです。そして、そのソフトウェアが工場の労働力として導入されるとなると、少し恐ろしさを感じませんか。
野村:AIが仕事を代替するという話はありましたが、それは電子空間の話で、物理的な世界の仕事は残るだろうというのが一般的な考え方でした。しかし、今回の話を聞いていると、物理的な空間の仕事も本当になくなっていくかもしれないと感じます。
comugi:そう思いますよね。もちろん、ロボットが公道を走る際の規制など、社会実装には段階があるでしょう。しかし、ホワイトカラーの仕事がAIに代替されると言われるのと同じように、ヒト型ロボットが普及した瞬間、物理空間の労働力も同じ状況を迎えるのではないでしょうか。変化はもはや時間の問題だと強く感じます。
<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。