トランプ氏「パリ協定離脱」は世界の危機
――みんながやれば止まる。でも、トランプ大統領のような「温暖化は問題ない」という発言はどう受け止めますか。

江守正多氏:
それは世界的大問題です。アメリカの連邦政府は気候変動対策に大ブレーキをかけますが、カリフォルニアやニューヨーク、リベラルな州や企業は対策を続けます。しかし、自分の国さえ良ければいいという政治勢力が政権を取る国が増えると、気候変動で災害が増え、難民が発生し、移民排斥やナショナリズムが強まり、気候対策が後退する悪循環になります。気候変動対策は世界の協力が不可欠で、自国だけでは意味がありません。そんな国が増えると、協力が崩れ、現代文明は持たないと思います。
日本の気候変動対策は

――日本はグリーンエコノミーなどで政策的に後押ししていますが、もっと加速するには何が必要ですか。
江守正多氏:
日本は気候変動対策を重視し、政治、行政、企業も真面目に取り組んでいます。日本の真面目さが活きていますが、既存産業を維持しながら進める側面が強いです。太陽光発電はかつて世界でシェアを持っていたが、大量生産で中国に負けました。ソーラーパネルの乱開発で自然破壊が問題になっている。営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は農地で農業と発電を両立させ、適度な日陰で作物を守り、農作業も効率化します。農地は既に開発された土地なので、これを活用するのは筋がいいと思います。これは、希望・期待が持てる。
――続いてお話しいただくテーマは何番ですか。

江守正多氏:
4番の「質の高い教育をみんなに」です。
――教育ですね。SDGs4番「質の高い教育をみんなに」の提言をお願いします。

江守正多氏:
負担意識から卒業する方法です。2015年の社会調査で、気候変動対策は生活の質を高める機会と世界の3分の2が答えましたが、日本では3分の2が生活を脅かすと答えました。日本人は真面目で、気候変動対策に我慢や努力を強いられるイメージを持ちがちです。
――日本は環境先進国と言われ、公害問題を克服し、川も綺麗になり、ポテンシャルがあるはずです。なぜこうなるのですか。
江守正多氏:
去年や一昨年から、気候変動を心配する人が8割、9割いますが、漠然とした心配で、「最近暑いからこの先どうなるか」と感じてはいるが、政策を変える理解に繋がっていない人が多いです。日本は災害が多く、受け入れてしまう傾向があります。気候変動は理由なく暑くなっているのではなく、人間が原因で止められる問題で、世界が協力していると伝わっていない感じです。
災害から気候変動問題を考えてもらう
――防災や減災の意識は高いので、災害と気候変動を結びつければ意識が変わりそうです。
江守正多氏:
海外では記録的な大雨や猛暑の報道で気候変動を関連づけますが、日本ではほとんどせず、暑さを実感するだけで終わります。災害報道と気候変動をつなげて伝える。災害直後は話しにくいですが、振り返るコーナーで気候変動を伝える。
――そうすれば、天災ではなく人災だとわかる。
江守正多氏:
例えば大雨による洪水が起きたとする。最近は、人間活動による温暖化がなければ雨が2割少なかった、ここまで起きなかった、災害が起きなかった、この規模は人災だったなど、科学的に言えるようになっています。そういう発表を合わせて伝えるべきです。