グレタさんの出現が意味するもの
――グレタ・トゥーンべリさんの行動を「無理だ」と感じる人もいます。どう思いますか。
江守正多氏:
2019年9月の怒りのスピーチで、自分が怒られていると感じ、負担意識から苦手と思う人がいると思います。人によって感じ方は違いますが、私は彼女が歴史的に現れるべき人だと感じます。気候変動には不公平があり、先進国が排出した温室効果ガスで低所得国や未来世代が災害に苦しみます。また世代間の人権侵害もいえる。気候変動によって将来世代を虐待している。しかし今、その実感を持っているひとは少ない。過去の奴隷制や植民地主義が当時は常識だったように、今の私たちの行動も未来から批判されるかもしれません。虐げられる側が声を上げ、常識を変えてきました。気候変動では、そういう構造がある。虐げられる未来世代は、子供が声を上げる必要があります。そこへグレタさんが現れた。未来世代のグレタさんはその象徴で、彼女の声で不公平に気づくべきです。
将来世代の声は歴史的必然
――若い世代やこれから問題に向き合う人に前向きなメッセージを。
江守正多氏:
歴史的にすごい時代に生まれ、自分の行動が未来に影響を与えるかもしれない。そして歴史がどう変わるのか、気候変動問題がうまくいくか瀬戸際をハラハラしながら見るのは、エキサイティングな人生が送れるが、知らないと通り過ぎてしまう。
――危機的状況だからこそ、未来を救い、歴史を変える主役になれるということか。
江守正多氏:
そういうことだ。
――グラデコの記録をご覧になっていかがですか。

江守正多氏:
悪循環の話が綺麗に書かれていてすごいです。
――地球環境問題は物理的な問題だけでなく、世代間の問題だと改めて理解しました。歴史の中で位置づけ、未来の歴史を良くするには今の私たちが主役意識、当事者意識を持つことが大事だと感じた。
江守正多氏:
主役意識というのはいい、みんな人生の主役だ。
SDGs=社会の大転換 全部やらなくてもいい みんなでやること
――改めて、江守さんが考えるSDGsとは何ですか。
江守正多氏:
SDGsは社会の大転換です。日本では「毎日いいことをしましょう」と思う人もいますが、飢餓や貧困の撲滅など、大きな変化が必要です。気候変動もそのスケールの話です。17の目標を一人で考えるのは大変で、私も13番しか普段考えていません。でも、SDGsのいいところはいろんな入口があり、役割分担できることです。私は13番をやり、別の目標は他の人がリードし、社会を変える先頭に立ってもらう。互いに応援できればいいと思います。
(BS-TBS「Style2030 賢者が映す未来」2025年6月15日放送より)