参院選後に「政治の光景の変化」を予感

では、“参院選後”に大きな変化を見せないのだろうか。筆者は変わるだろうとみている。特定の政党が大きく議席を増やしたり、減らしたりしなくても、“参院選後”の光景は変化するだろう。

政治日程を俯瞰してみると、参院選が終われば、3年間国政選挙=衆院選・参院選がない可能性が出てくるのだ。衆議院の任期満了は2028年10月。次の参院選は2028年7月だろう。2025年7月~28年7月までは「国政選挙が何もない(補欠選挙などは除く)3年間」となる可能性があるのだ。

参院選がどう動いても衆議院の方は自公で過半数を確保できない「少数与党」の状態は変わらない。こうした中でどうやって“参院選後”に予算や重要法案の成立を進めていくことになるのだろうか。

自民党もこれまでのように野党側の要求を“丸呑み”する譲歩を繰り返すだけでは、党内がガタガタになってしまうだろう。また野党側にしても与党を批判するだけの批判政党であれば有権者から早晩愛想を尽かされるだろう。

議会政治で物事を決めるためには絶対に必要な「過半数」を獲得できていない政治状況であるから、与野党双方が物事をどう決めていくかお互いに智恵を絞る。そんな光景を筆者は想像する。

それが新たな連立の枠組みとなるのか。別の意思決定のやり方なのか。それは定かではないが、各党はこの夏の参院選の結果を「一つの民意」と受け止め、選挙後どう対応していくか判断していくことになるのではないか。

選挙後、石破総理や野田代表、国民民主党の玉木雄一郎代表ら各党の党首たちはどう動くのだろうか。こうした政治の有り様を決めるきっかけとなる可能性は十分秘めている参院選だと思う。

これから約1ヶ月間、各党首らは東奔西走するだろう。彼らが何を発信していくのか、一人の記者としてウォッチしていきたいと思う。

〈執筆者略歴〉
後藤 俊広(ごとう・としひろ)
TBSテレビ報道局 解説委員
1972年生まれ
1996年TBS入社
2004年からおよそ20年間政治報道に携わる
2017年与党キャップ
2018年官邸キャップ
2021年から2024年6月末まで政治部長
2024年7月から現職

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。