地域の命を守る最前線:老朽ため池の現実と対策

広島県ため池支援センターの職員
「流入あり。では戻してください」

東広島市で点検をしていたのは、4年前に開設された、広島県ため池支援センターの職員たちです。

「防災重点ため池」を毎年、400箇所のペースでパトロールしています。下流への流れは適切か・池を支える堤体が壊れていないか、その劣化具合などをくまなくチェックします。必要に応じて、ため池の管理者と連携しながら補修を進めます。

広島県ため池支援センター 小谷太志 センター長
「農家の高齢化や離農が続き、管理が疎かになるため池も。調査して安心・安全が一番」

実は、広島県内にあるため池の約7割が、江戸時代以前に造られたものです。つまり、いまの安全基準を満たしていないケースが少なくありません。老朽化も進み、抜本的な対策がまったなしの課題です。

RCCウェザーセンター 末川徹 気象予報士
「広い。ここまで大きなため池を見たことない」

最大貯水量57万立方メートル。25mプール950杯分を蓄えられる小野池です。地元住民にとって、ため池は地域に欠かせない存在だといいます。

小野池水利組合長 窪田恒治さん
「(Qため池の恩恵は?)ありがたい。コメを作れて地域を守れる。池のおかげ」

いまは堤体の強化と、増水したとき水を安全に流すための放流管設置に向けた大規模な工事が行われています。

しかし、重機を使う大がかりな作業で池の水を抜いておく必要があります。その影響で、下流の約100軒の農家は、工事期間中、苦渋の決断を強いられました。

小野池水利組合長 窪田恒治さん
「ことし・来年はコメを作れない。ほとんど。小野池がこのあたりの水源だから」

それでも「災害リスクが減るなら」と住民たちも理解を示しているそうです。

小野池水利組合長 窪田恒治さん
「豪雨に神経質になっている。最近は降る量が多い。池に一気に水が溜まって、どんどん流れて川の氾濫が一番心配」