「陰口」から始まった暴行がエスカレート

3人の共同生活は1か月ほどで破たん。2022年8月頃、前田被告は佐藤さんが「自分の耳が聞こえないことについて陰口を言っている」ことを知り佐藤さんに対し殴る蹴るなどの暴行を加えるようになる。山口被告も佐藤さんを疎ましく思い暴行を止めず、自らも加担、さらに謝罪する佐藤さんの様子を動画で撮影し虐待していたと検察側は主張する。山口被告は、佐藤さんについて「殴りたい」「いらない」などという内容のメッセージを前田被告に送っていたという。

2022年11月に入ると、山口被告と前田被告は、佐藤さんに自宅アパートから出ていくよう命じる。佐藤さんが従わないことに腹を立てると「出ていけ」などと言いながら殴る蹴るの暴行を繰り返し、その行為は日を追うごとにエスカレートしていった。2022年11月8日には、「排泄物を食べたらアパートに居させてやる。自分のも食え」などと話し暴力を恐れる佐藤さんに実際に食べさせたとされる。

2日後の2022年11月10日、暴行を加えた勢いで足の指の骨が折れた前田被告。山口被告と病院に行き、自宅に戻ると佐藤さんが持病のてんかんの発作を発症し倒れていた。部屋が荒れているのは佐藤さんのせいだと腹を立てると髪をつかみ後頭部を床と壁にたたきつけたが、それでも怒りが収まらず佐藤さんの首を絞め殺害。その後、11月12日から14日にかけ自宅の浴室で遺体をチェーンソーで切断。スーツケースに入れタクシーで仙台市若林区の荒浜地区に向かい地中に遺体を遺棄した。

仙台市若林区荒浜

犯行後、山口被告は前田被告と共に逃避行を始め、千葉市や青森市などのホテルを転々とする。2022年12月15日、前田被告は佐藤さんの名前を名乗り青森市内の病院に入院。29日、佐藤さんの親族が、佐藤さんを名乗る前田被告の見舞いに訪れたことで自首を決意。事件が発覚することとなった。これが検察側が冒頭陳述で明らかにした事件の概要だ。弁護側は殺人などについて争う姿勢を示している。