パレスチナ問題に及び腰な日本

「大量虐殺をやめろ」のプラカード=福岡市で2024年5月、神戸撮影)

「ジェノサイド」(大量殺戮)について、少し考えてみます。第2次大戦中のナチス・ドイツによる組織的なユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)への反省から、1948年にジェノサイド条約が国連総会で全会一致により採択されました。

※ジェノサイド条約特定の人種、民族等の集団への殺害行為等を国際法上の犯罪として禁じ、締約国に集団殺害の防止や処罰、犯罪人引渡し等を義務付けている。現在、同条約の締約国は153か国で、先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)加盟国では日本以外の37か国は全て条約に加わっている。
(参議院常任委員会調査室・特別調査室『立法と調査』466号、2024年4月)


採択当時、日本は連合国の占領下だったということもありますが、なぜかその後も、この条約に加わっていません。アメリカとともに戦後を生きてきた日本は、イスラエルがアメリカの友好国家であることを意識してきたのかな、とも思うのです。イスラエル、パレスチナに対する日本の態度はちょっと及び腰だと言えるかもしれません。

今日(6月10日)の朝日新聞朝刊には、パレスチナ自治政府のムスタファ首相が朝日新聞と会見し、17日から国連で開かれる会議で「パレスチナの国家承認に向けた動きが不可逆の段階に入ると述べた」と報じています。

パレスチナを国家として認めている国は150か国に上っています。つまり、今回のガザ侵攻は、イスラエルとパレスチナの「2国」間で起きている戦争、という捉え方になるわけですが、日本も含めたG7諸国は国家としては認めていませんが、フランスのマクロン大統領は国家承認する可能性に言及しているそうです。ムスタファ首相は日本にも「G7の一員として国家承認の決断を示してほしい」と言っています。

「ジェノサイド」には様々な顔が

「パレスチナに平和を」デモには日本人も多かった=福岡市で2024年5月、神戸撮影)

ジェノサイドには、人を殺すことだけを指すのではありません。例えば、子供を奪い去ること。民族浄化を目指しているので、民族の将来につながる子供を産んでいくことを阻止する、というのもジェノサイドにも含まれます。

ほかにも現に起きていることとして、住宅の大量破壊(ドミサイド)。そこに住めないようにすることですね。「医療システムの組織的破壊」(メディコサイド)もそう。攻撃による汚染、「環境破壊」(エコサイド)。これも「そこにはもう住めない」となります。それから「教育の破壊」(スコラスティサイド)。もう12の大学が破壊されています。さらに「ジャーナリストの殺害」(ジュルナイサイド)。記者が伝えることを阻止する。

そしてその周辺には、「文化の虐殺もある」と岡さんは言います。世界最古の教会の一つ、今はモスクになっていますが、破壊されました。文化を破壊していくことでアイデンティティを破壊していくのです。この状況を見過ごしていいのでしょうか。イスラエルで2006~2009年に首相を務めたエフード・オルメルト氏でさえ、「我々がガザで行っているのは絶滅戦争だ」と批判しています(ハフポスト5月26日付)。

ジェノサイドには様々な側面がある

これを止めるために日本はどうしたらいいのか、を考えていかないといけないのではないかと感じました。