企業に打撃の“トランプ関税” 「新しいリスクと機会を考える出発点」

──りそなグループの大きな柱の一つである「個人」について聞いてきたが、もう一つの大きな柱が「中小企業」。日本に限らず世界全体のビジネスが“トランプ関税”に揺らぐなか、銀行として「中小企業」に提供できる価値は?

現状がどうなっているかも非常に大事だが、我々が考えなければいけないことは、一定程度時間が進んだときに、直接的・間接的にいろんな波及経路を通じて個別の顧客にどんな影響が出てくるのか。業種や顧客が置かれている状況や財務体質によって様々なので、個別の予兆の変化をしっかり見据えながら、対話の質量を上げたい。そのことが、新しいリスクと機会を考えていく出発点になる

現時点でインパクトは見通せる状況にはないので、いま大事なのはこれからの予測のレンジを複数持つこと。最悪の事態も想定しながら、ちゃんとリアルな足元の動きを見続けることが必要。必ずどこかの時間軸で影響は少なからず出てくると思うので、変化に適応するために情報収集を怠らないことが大事なポイントだと考えている。

──先行き不透明感で企業の設備投資が鈍る場合、銀行にとって融資の減少はどの程度の打撃になるか?

これは読みにくいところで、個々の企業によっても戦略は違うが、ベースとなるトランプ関税の状況次第でかなり変わってくる可能性はある。その中で(設備投資の)判断が少し後にずれるとか、方向転換を一部しようという動きには個々に対応していくほかない。顧客が成長しないのに我々だけが成長することはないので、二人三脚で寄り添い、コンサルティングをしっかりやっていく。

■取材後記

長らく続いた低金利時代が終わりを迎え、銀行ビジネスは大きな変革期を迎えている。そこにJR東日本やNTTドコモなど異業種のビッグネームの参入が相次ぐなど、金融・非金融の垣根も下がる一方だ。これから先“銀行だからできること”は何なのか?スピード感をもって次の姿へと変貌できるのかが問われている。

TBS経済部 渡邉優子