約20年にわたり、口座の無断開設や迂回融資により、少なくとも247億円にのぼる不正融資を行っていたことが明らかになった、福島県いわき市の「いわき信用組合」。5月30日に開かれた信用組合の会見で、現在の経営トップは、「オモテと裏の顔を持つ特異な金融機関」と自ら表現した。前代未聞の巨額の不正融資の背景には、何があったのか。(前編から続く)

呪縛から解放されたような表情で…現理事長の異例の会見

5月30日、第三者委員会による一連の不正融資についての調査報告を受け、同日夕方、本多洋八理事長などがおよそ2時間にわたって会見を開いた。現在の経営トップの本多理事長は、苦渋に満ちた謝罪会見というよりも、これまでの呪縛から解放されたような、時折晴れやかな表情すら浮かぶ、異例の会見だった。

本多理事長は「信用を第一とする金融機関として極めて重大な不祥事を発生させ、組合員及びお客様はじめ関係各位に多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことをあらためまして深くお詫び申し上げます」と謝罪し、深く頭を下げた。

いわき信用組合の会見・5月30日

本多理事長は、一連の不祥事の発生要因として「代表理事として長く理事を務め、不祥事発覚時には会長であった(江尻次郎)前会長の発言が、組織の中で次第に絶対的となり、役員間の闊達な意見交換や役員相互の牽制などの正常なガバナンスが機能しないほどの一経営者の統治に大きな問題があったと認識している」と、説明した。

そのうえで「大きな不祥事を内部に抱えながら、地方創生に資する取り組みを積極的に行う金融機関という『オモテと裏の顔の二面性』を持つ特異な金融機関だった」と、自虐的ともいえる分析をした。

そして「とりわけ東日本大震災と原発事故発生後、2012年の『公的資金の注入』があり(江尻)前会長を含む役員は「正常化バイアス」ともいえる心理状態に陥り、内部の大きな問題から背を向け、不祥事の隠ぺいを続けてしまった。『例外事案』が次第に必要悪として存在が認められるようになってしまった結果、コンプライアンスに係る仕組みにおいても『オモテと裏の二面性』的な使われ方になった」と説明した。