チームの先輩・丹野との共通点

日本記録を出した08年に丹野が所属していたナチュリルは、福島大学監督だった川本和久氏(故人)が、同大学の卒業生メンバーを中心に立ち上げたチーム。11年からは東邦銀行がチームを受け継いだ。松本は筑波大出身だが、19年に東邦銀行に入社して川本氏の指導を受けた。丹野は松本にとって同門の先輩にあたる。

川本氏の後を継いだ東邦銀行の吉田真希子監督(400mハードルの元日本記録保持者で03年のパリ世界陸上代表)は、昨年の全日本実業団陸上の際、2人の違いと共通点を以下のように話していた。

「前半のスピードはあまり変わりませんが、後半は丹野さんの走りの効率が高く、差がついています。タイプが似ているところもありつつ、似ていないところもあるので、参考にするところは参考にしますが、松本は松本の進め方でやっています。川本先生のコンセプトを振り返ることも多いですし、色々と整理して取り組んでいます」

自己記録もアベレージも丹野がまだ上だが、その差を松本が徐々に詰めている。丹野の09年アジア選手権優勝記録は53秒32で、今回の松本はそれを上回った。同じ09年のベルリン世界陸上が、丹野の個人種目代表最後の大会だった。松本が今年の東京2025世界陸上の代表入りをすれば、五輪を含めても丹野以来の女子400m代表となる。

松本も22年オレゴン世界陸上男女混合4×400mリレーなどの代表経験はあるが、個人種目で出場することが目標だ。

「個人で世界と戦いたい、日本代表になりたいと、常々思ってきました。地元開催ということももちろんありますし、東京世界陸上は個人種目の代表になることが一番優先されますが、出場するだけではつまらないので、世界陸上でも戦っていけるようになっていきたいと思っています」

丹野は07年の大阪世界陸上で準決勝に進出した。同じ地元開催の世界陸上で、松本が偉大な先輩の業績に迫る。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)