「党への忠誠心などありません」

人々がたくさん死んでいく。そんな状況の中でも北朝鮮当局は、ミサイルや衛星開発名目で軍人たちがお金を徴収しにまわって来ることがあったという。
スヒさんの家庭は裕福なほうだったが、お金を徴収された月は生活が厳しく、かなりの不満がたまっていった。
スヒさんだけではなく、同年代のほとんどが同じ思いを抱えていたとスヒさんは主張した。

取材中にスヒさんは何度も繰り返して北朝鮮でも“お金は大事”と強調していた。
生活していく上で、食料など労働党からの配給は当てにならず、自分たちの稼ぎだけが頼りだったと少し声を荒げた。

最後にスヒさんは「自分もそうですが、友だちなど同年代の人たちは、社会主義の恩恵を知らずに育ちました。そんな中、党に忠誠を誓えと言われてもそれはできませんよね」「党への忠誠心の無い若者が増え続けているので、北朝鮮の体制が崩壊するのは割とすぐかも知れません」と、声のトーンを低めて話した。

脱北後に広がった進路の選択肢・・・「まだ迷ってます」

スヒさんは韓国に定住して進路の選択が増えた分、どの道を進むか迷っているという。
脱北準備のため、北朝鮮では諦めていた大学への進学は絶対したいと言いつつも、何を勉強するかは決められないと話す。英語など北朝鮮ではふれる機会が少なかった外国語にも挑戦したいし、お金の流れを勉強できるような経営・経済学にも興味があるとのことだ。

アイドルへの夢は叶えられそうかと聞いたところ、「具体的な計画は立ててないが、まだ諦めてはない」と恥ずかしそうに答えた。
ただ、どの道に進もうと、将来は北朝鮮の人権問題をとりあげる人になりたいと夢を語った。

電話取材からおよそ半年後、スヒさんに近況を尋ねた。まだ進路を決めてないという。迷いすぎて頭が痛いと話したが、自分へ与えられた選択肢が多い証拠でもあるので、とても幸せだとメッセージを送ってくれた。

スヒさんとのメッセージのやりとり。進路はまだ決めてないと、返ってきた。