「雨水は汚い」「雨水は口に入らないように」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか?しかし、そんな雨水をサイダーにした人がいます。
なぜ?本当に飲んでも大丈夫なの?話を聞いてみると、雨水の壮大な世界が広がっていました。

■雨水は飲んでも大丈夫?汚くないの?

見た目は無色透明の普通のサイダー。しかし、口に入れるのは正直ためらってしまう。
その理由は原材料にある。瓶に「原材料名:水(雨水)」と表記されているからだ。
これは雨水で作られた、その名も『あまみずサイダー』である。何度も飲んでみようと試みるが「雨水は汚い」というイメージが拭えず、身体が抵抗してしまう。

本当に大丈夫なのだろうか。考案した福井工業大学の笠井利浩教授に聞いてみた。

原材料名には「水(雨水)」と記載 本当に雨水を飲むんだ・・・

ーー雨水を飲んで大丈夫なんでしょうか?

「大丈夫です。一応、活性炭を通して、ミクロフィルターで細かなホコリや菌を引っ掛け、その後、紫外線で殺菌するという自分で作った浄化装置を通してますし、食品衛生法の水質項目49項目もクリアしています」

ーー雨水は汚いと言われるのに、薬も使わず、それだけできれいになるんですか?

「もちろんです。雨というのは降り始めは汚いです。それは晴れている間の大気中に車の排気ガスや黄砂などが舞っているから。雨自体はキレイなのに、大気中を抜けてくるときに黄砂などを抱き込んで、屋根に積もってるホコリとかを洗いながら降ってくるから、最初の降り始めは汚いけど、その後の雨はもうバリバリ(キレイ)です」

教授が雨水はキレイだと言うし、浄化作業もしているなら大丈夫・・・勇気が出てきた私は、早速『あまみずサイダー』を手にして、今度こそ飲んでみた。

ん?!匂いはなく、口当たりは滑らか。市販で売られているサイダーと何も変わらなかった。他のスタッフにも飲んでもらうと「雨水って飲んでもいいの?」と怪訝そうだったが、口にすると「美味しい!」「あ・・・普通のサイダーだね・・・」という反応だった。
どうやら、私達が抱いている「雨水」のイメージは、実際の雨水とは違うのかもしれない。

■「水質は水道水より機能性を持った水」 お財布にも環境にも優しい

雨水のイメージを変える…実はこれこそが、笠井教授があまみずサイダーを考案した理由だった。

近年、気候変動により豪雨被害が増え、日本国内では被災時における生活用水確保の必要性が高まっている。2014年には「雨水の利用の推進に関する法律」も制定されているが、普及には至っていない。

そこで、教授は2021年から「あまみず飲料化プロジェクト」をスタート。雨水を活用する社会にするためには技術開発だけでなく、まずは多くの人が感じているであろう、“雨水は汚い”というイメージを払拭させる必要があると考えた。そのため『あまみずドリンク』から、“雨水の活用を考えてほしい”という思いで飲料化に至ったのだった。

ーー具体的に、雨水の活用にはどんな可能性がありますか?

「水資源になればと思っています。そのためには量と質が大事になります」

ーー量と質ですか?

「量については、例えば私が住んでいる福井県の年間降水量は約2200mm。一軒あたりの屋根が100㎡とすると、1日で風呂桶約3杯分の雨が屋根に降ってきているという計算になります。トイレの排水くらいには問題なく使えるくらいの量の雨が降ってきているわけです」

ーー質というのは?

「雨水の水質は水道水より機能性を持った水なんです。水道水の中には必ずカルシウムやマグネシウムが入っています。一方で、雨は蒸発して上空で結露して、ほぼミネラルを含まない天然の蒸留水を作ってるようなものなんです。例えば洗濯をするときに水道水だと、カルシウム・マグネシウムが洗剤の界面活性剤とくっつき、沈殿してしまって洗剤として働かなくなります。ミネラルの入っていない雨水を使えば、水道水と比べ洗剤の量も減らせるんです」