アジア選手権2025が5月27~31日の5日間、韓国・クミで開催される。日本は9月開催の東京2025世界陸上につながる重要な大会と位置づけ、「メダル獲得が期待できる選手」をチーム編成方針に掲げて代表選手選考を行った。前回2023年のタイ・バンコク大会で、日本勢は素晴らしい活躍を見せ男女16種目に優勝した。クミ大会で優勝が期待できる日本選手、外国勢も含め世界レベルの種目、記録的な期待ができる種目を紹介していく。今回は男子フィールドとロード種目編。

代表試合にしか出場しないアジア記録保持者

現在アジアが“世界一”の種目が3つある。男子やり投、女子の3000m障害とやり投は、23年ブダペスト世界陸上、24年パリオリンピック™とアジア勢が2年連続で金メダルを獲得している。その内、男子やり投・パリ五輪金メダリストのアルシャド・ナディーム(28、パキスタン)がエントリーしている。

若手の頃のナディームは突出した選手ではなかった。16年のU20世界陸上は予選落ち、17年のアジア選手権は7位、18年のジャカルタ・アジア大会は3位、19年のドーハ世界陸上も予選落ちだった。しかし21年東京五輪で5位に入賞すると、翌年のオレゴン世界陸上も5位入賞。23年のブダペスト世界陸上で銀メダルを獲得すると、24年パリ五輪で金メダリストへと登り詰めた。五輪&世界陸上や地域選手権、英連邦大会など代表試合にしか出場しないことが特徴で、ダイヤモンドリーグは昨年7月のパリ大会1試合しか出場した形跡がない。極めて珍しいタイプの選手である。

隣国インドに、ブダペスト世界陸上金メダルのニーラジ・チョプラ(27)がいる。年齢的にはナディームより下になるが、16年U20世界陸上優勝、17年アジア選手権優勝、18年ジャカルタ・アジア大会優勝、21年東京五輪金メダルと、若い頃からタイトルを取り続けてきた選手だ。そのチョプラを追いかける形でナディームは成長してきた。残念ながら今大会にチョプラはエントリーしていない。ライバル不在の大会でナディームが、どんな投てきを見せるだろうか。代表試合にしか出場しないので、シーズンベストは、毎年その年の重要試合で投げている。22年に初めて90mを超え、昨年のパリ五輪では、92m97のアジア記録(世界歴代6位)を投げた。今季は9月の東京2025世界陸上に合わせると思われるが、アジア選手権でも90m前後の大アーチを期待したい。