「あと10年は頑張る」と語っていた畠山さん

 漁師だからこそ気づいた畠山さんの考え方に、学問的な研究から同じ結論に至った京都大学名誉教授の田中克さん(森里海連環学)は、20年以上ともに活動してきました。

 (京都大学名誉教授 田中克さん)「畠山さんは、『この年齢になってやりたいことがますます増えた。あと10年は頑張る』と、話していたのに…」

 田中さんは、目を潤ませました。

 (京都大学名誉教授 田中克さん)「たかだか30万年の人類ですが、数百万年前から森と海をつないできたウナギは、決してふるさとを忘れず、必ず海に帰ります。自然が豊かで、自然を大切にしてきた日本人だからこそ、世界中に発信しなければ、幸せに暮らせる未来はありません。ウナギはそれを私たちに教えてくれているのです」

 気仙沼から受け継がれた“森は海の恋人”という考え方。それが今、大阪の山に根を張り始めています。近い将来、きょうこどもたちが木を植えた森の栄養が育んだウナギを、私たちが食べる日が来るかもしれません。

【執筆者】尾㟢豪 MBSプロデューサー(事業局)
京都大学農学部水産学科卒。元報道局解説委員。これまで情報番組を中心に『お魚博士』として、テレビ・ラジオで20年に渡り生き物に関するニュースを解説。2010年には、絶滅種クニマスの発見に関わり、一部始終に密着したドキュメンタリー番組『クニマスは生きていた!〜“奇跡の魚”は、いかにして「発見」されたのか?〜』で、放送文化基金本賞、科学技術映像祭内閣総理大臣賞、など5つの賞を受賞。MBSの深夜バラエティ番組『Aぇ!!!!!!ゐこ』に生物監修として関り、2022年、道頓堀川で絶滅危惧種ニホンウナギの生存確認に初めて成功、論文として記載した。