「あした死んでもいい」神々しいほどの景色に魅せられて

セティ・ゴルジュ ゴールの谷底近くにある高さ220mもの大滝

田中さんは、キャニオニングやラフティングのガイドを務めながら、冬場は長野県のスキー場でスタッフとして働き、探検のための資金を調達。年に一度のペースで、海外の渓谷に挑んでいる。

キャリアは20年以上で、これまで何度か命の危険を感じたことがあるという田中さん。“命綱”のロープの直径はわずか8ミリだが、特殊な素材で重さ2トンにも耐えられるくらいの強度がある。このロープを頼りに、絶壁を下っていく。

難関といわれる台湾の渓谷

▼田中彰さん
「今まで誰も入ったことがない、存在すら知られていない場所で、『僕らしか見られない景色に出合える』というのが一番の魅力ですね。科学技術が発達した現代で、『そこに行かないと見えない場所』は渓谷や洞窟しかない。だからこそ、その場所を追い求めたくなるんです」

未踏の地で、魂が揺さぶられるような地球の美しさを感じる瞬間もある。

▼田中彰さん
「深く狭い谷底でも、一瞬、太陽の光が差し込むことがあって、その時は周りが全て黄金色に輝いて、とても神々しい。本当に“神がかって”見えます。そんな絶景に出合ったときには『もう、あした死んでもいい』と思うくらい。でも地球上には、まだまだ“未踏の地”がたくさんあって、やめられないんです」

時に、牙をむくような厳しい自然に立ち向かい、誰もが経験できない挑戦を続ける田中さんだが、「“探検”は日常の中にもある」と話す。