切り花を長持ちさせるプロの技と家庭でもできるコツ

生花の魅力は瑞々しさと自然の美しさだが、切り花はとてもデリケートで、環境によってはすぐにしおれてしまう。特にアジサイは繊細な花の1つ。水の吸い上げがよくなく、他の花よりも早くしおれてしまうという。
本番中なるべくアジサイを長持ちさせるために、小さな試験管のような容器を茎に取り付け、水分を供給する工夫をしていた。また、「エコゼリー」と呼ばれる、水分を含んだ透明なゼリー状の保水材を使うこともあったそうだ。
「寒い時期の撮影だったことも救いでした。できるだけ日の当たらない、涼しい場所で保管して、スタンバイの間も水に挿した状態で管理していました」。照明の熱で室内が温まってしまうセットでは、細心の注意が必要だったという。「特に、部屋で切り花を扱うシーンでは、手の熱で花が弱ってしまうので、カットがかかるたびに冷たい水に戻していました」と、舞台裏での繊細な気配りを明かす。

では、家庭で切り花を少しでも長く楽しむには、どんな工夫ができるのだろうか。森氏はこうアドバイスする。
「こまめな水替えは基本ですね。水の中に花をそのまま入れておくと、根元に細菌が繁殖しやすくなるので、水を替える時に、茎の根元を少し切り戻すと、さらに効果的です」。
さらに、「花の栄養剤を少し加えるだけでも、持ちがよくなります」とのこと。生花店で購入する際に一緒にもらえることも多いが、ホームセンターなどでも手に入るので、用意しておくと安心だ。
ただし、どんなに丁寧に扱っても花には限界がある。「花よりも葉物の方が断然丈夫です。グリーンが入っているアレンジメントなどは、最後まで葉だけが元気だったりすることも多いんです」と森氏。選ぶ花の種類にも注目したい。「たとえば、ガーベラのように茎が柔らかくて水分を多く含んでいるものは、意外と腐りやすかったりするんです。茎がしっかりしていて硬めの花のほうが、長く楽しめる傾向にあります。それと、切り花より鉢のほうが長持ちします」。
生花を暮らしの中に取り入れるなら、見た目の華やかさだけでなく、管理のしやすさも意識して選ぶのが長く楽しむコツだ。ちょっとした工夫と知識があれば、花のある生活がもっと身近に、もっと楽しくなる。

「見た人が“本物みたい”と思ってくれたら、それが一番うれしい」と語る森氏。旬を迎える梅雨どきより少し早く訪れたアジサイの風景。造花と生花が見事に溶け合う中、季節を超えてアジサイを咲かせるための工夫や、細部に込めたこだわりが、作品の世界をより豊かに彩っている。