梅雨の季節を彩るアジサイは、日本でも古くから親しまれている花の1つだ。青や紫、ピンクといったさまざまな色が特徴で、その神秘的な色合いが多くの人を魅了してきた。また、小さな花が集まって1つの大きな花房を形作る姿は、調和や結びつきを象徴するともいわれている。

朱野帰子原作のお仕事小説『対岸の家事』(講談社文庫)をドラマ化した『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)では、そんなアジサイが物語の重要なモチーフとして登場する。ドラマの世界観を表現するため、セットや衣装にさりげなく取り入れられ、作品の雰囲気をより一層引き立てている。しかし、撮影はアジサイの開花時期とは異なる季節に行われたため、植木装飾チームによるさまざまな工夫が施された。

ここでは、本作の植木装飾を担当した森真梨亜氏に取材を敢行。一見すると、本物のようなアジサイをどうやって作り上げたのか尋ねてみた。

“季節外れのアジサイ”に挑んだ植木装飾の工夫

火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』より

「植木装飾」とは、テレビドラマ、バラエティ番組、トーク番組、音楽番組等の生花木を素材としたスタジオ装飾を担う担当のこと。森氏はドラマセット内の庭や生け花など植物や造花、造葉を使った装飾を担当している。

アジサイが物語の重要なモチーフとして登場する本作。全て本物のアジサイで挑みたいところだったが、撮影時期がアジサイの季節とは異なっており、用意に困難を強いられた。「生産者の方々にも問い合わせたのですが、時期的にまだ株が小さく、大きなものは手に入らなかったんです。そのため造花や造葉を使う形になりました」と工夫を重ねたことを振り返る。

「屋外ロケでアジサイの道を作る際は、造花や造葉を細い竹のようなものにつけて1本の枝のように見せ、それを本物のアジサイの枯れ枝に巻きつけるといった工夫をしました。また、その枯れ枝もないような場所では、会社で常備している植木に造花を取り付けて株ごと作り、道を彩ることもありました」。

主人公の専業主婦・村上詩穂(多部未華子)が慕う先輩主婦・坂上知美(田中美佐子)の家の庭にあるアジサイは造花と造葉でできているが、「その周囲の植木や花は本物を使用しています」と森氏。劇中でアジサイを生けるシーンやアップで映る場面では、市場で仕入れた海外から輸入された生花のアジサイの切り花を使用したという。また蔦村医院の蔦村晶子(田辺桃子)がアジサイの苗を買うシーンが出てくるが、「本物の小さい苗を仕入れました」と裏話を明かす。

火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』より、田辺桃子