“白いアジサイ”を青や赤に――手作業で色づけるこだわり
アジサイは咲く季節が限られている花だ。梅雨の時期にしか見られないこの花を、撮影のタイミングに合わせて用意することは、植木装飾チームにとって大きな挑戦だった。「輸入されたアジサイを入手することはできましたが、劇中で使いたい色を継続して入手することが難しくて悩みました」。そこで森氏が取った方法が、白いアジサイを1本1本染めるというものだった。
「生花用のスプレーを使って私が全て手作業で染めました」と森氏。アジサイは土壌の酸度によって色が変化する性質があるため、自然な色味を再現するのは簡単ではない。特に本作では、主人公の娘・苺(永井花奈)が「あお、あか、ピンク」とアジサイの色を語るセリフもある。
「造花と造葉でアジサイの道を作った時、実際に見て『あれ?これ本物?』と驚かれた方も多かったですね」。通りすがりの人が「こんな時期にアジサイが咲いているの?」と言われた時はうれしかったという。
そのクオリティの高さに、主演の多部未華子さんも驚いたそうだ。「『どれが生花で、どれが造花かわからない』と言ってくださって。そう言ってもらえた時は、やっぱりうれしかったですね」と森氏。最近の造花は本物そっくりに作られており、「逆に本物が造花に見えてしまうこともあるくらい」と笑う。
「葉が本物だと造花を入れても気付かないことがあるくらい、造花の技術は年々進化していますね。植木装飾は作品づくりには本当に欠かせない存在になってきています」と、語ってくれた。ドラマの世界観を支える“裏方の美学”には、季節を超えた花々への深い愛情と、細部へのこだわりが詰まっている。
さらに、本作では坂上家の庭や詩穂の家のベランダにガーデニングスペースを設け、ハーブやイチゴの苗を配置するなど、細部までこだわった装飾が施されている。「苺ちゃんの存在を意識して、イチゴの苗をいくつか入れました」と、登場人物の個性を反映したセット作りにも注力した。














